すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

Think Differentの肝となるのは…

2020年07月22日 | 読書
 前稿より続く。

 『考え続ける力』(石川善樹 ちくま新書)

 このブログに訪問してくださる方々には、国語教育関係者も少なくないと思うので、紹介に値する情報だと確信して載せてみる。著者が友人から教えてもらったという、芭蕉の有名句の「すごい理由」というのにたまげてしまった。「古池や蛙飛びこむ水の音」…高学年担任の時に授業したときのことを思い出すと…。


 切れ字の「や」で感動の中心についてふれる、蛙の数、周囲の様子を問うて情景を想像させる…程度だったと思う。ここで紹介されているのは、この句は「古池や/蛙/飛びこむ/水の音」の四要素に区分され、それぞれ意味づけ、象徴され、融合されているという。それは順に「侘び/雅/下品/寂び」というのだ。


 「つまりこの句は『生命のいない白黒の世界』からはじまり、さいごは『みずみずしい生命あふれるフルカラーの世界』へと大展開を遂げている」という解釈には恐れ入る。詳しくは本文に委ねるが、ここから「芭蕉の発想を、一般化するにはどうすればいいか」と展開していく。ここからの件も実に興味深かった。


 話は「大局観」という方向へ展開する。そこで示されたダイアグラムは実に明快だ。縦軸に「主張⇔謙虚」、横軸に「個人主義⇔共同体主義」がとられ、四分割された箇所に、米国、ヨーロッパ、中東、日本が位置づけられる。この軸が「思考」の型に結びつくのは云うまでもない。予想できるように日本は右下である。


 文化基盤として、日本はいろんなものを取り込むと同時に、本質を探し出そうとする傾向がある。この精神的特徴を背景に、芭蕉のすごさを結論付ける。大雑把に言えば、キーワードは新しさを求める「アップデート」と質を高める「アップグレード」。双方向的な展開と優先づけが、Think Differentの肝になるとみた。


コメントを投稿