すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

誰もが探し、飛び立っていく

2020年01月03日 | 読書
 正月休みに読もうと思って、図書館からごっそり大人向けの絵本を借りてきた。そうした紹介をしてあるサイトもあり参考にしながら選んだ。元日の『遠い町から~~』を皮切りに、のんびり読み始めている。2冊目、3冊目は…


 【ぼくを探しに】シルヴァスタイン  倉橋由美子・訳



 これは絵だけを見れば、三歳児でも楽しめそうな一冊だ。ことばも平易である。自分に「足りないかけら」を探し求めて、ころがり続ける話。missing pieceを追い続けるストーリーは、ある意味では普遍とも言えるし、ありがちな解釈はたくさん生まれそうだ。ただそこに留まらない何かも導き出せるような気もした。

 作家倉橋由美子の最初の翻訳本だそうである。実に味わいのある「あとがき」を記している。missing piece探しは若者や特殊な人間に限られるとしながら、こんなふうに語る。「無事に、あるいは苦労して生きてきた人間がある程度年を取った時に気づくのも、実はこの自分の欠けて足りない何かである」。沁みる一節だ。



【リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険】トーベン・クールマン  金原瑞人・訳



 おっ、と思った。なんとネズミ年にふさわしい話ではありませんか!それも主人公は「なんヵ月もうす暗い図書館にかよって」人間の書いた本を読みふけるネズミ。そしてその知識と行動力によって、空を飛ぼうと考え、失敗に負けず実行していく。緻密でしかも表情豊かな描写、画面構成も素晴らしい傑作である。

 ネズミは、ドイツから「自由の国」アメリカへと渡ろうとする。時代設定が人間社会に飛行機が登場しかけた頃だろうから納得できるが、今だと少し皮肉のようにも受け取れる。初刊2015年だから、そういう考えもできるか。つまりドイツのネズミによって触発された英雄「リンドバーグ」だ、題の本意を知りたい。


コメントを投稿