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内を観て,外を知り,路を選ぶ

2014年10月22日 | 読書
 「2014読了」111冊目 ★★★
 
 『整体的生活術』(三枝 誠  ちくま文庫)


 「整体」という言葉からうけるイメージは、気や身体的な動作に関わることだ。
 もちろん、そこへ帰結することになろうが、著者がこの本で強調しているのは、「人間が健康に暮らしていくためにどうしても必要なこと」として挙げた次の三つのことだ。

 ●誰とつきあうのか
 ●どんな場所に住むのか
 ●何を食べるのか


 ともすれば、自己の内面を見つめ直す作業の重要性にとらわれがちだが、それよりも誰(何)と関わっていくかをしっかり押さえることだという。キーワードは

 外経絡(がいけいらく)


 この言葉自体は辞書にはない。著者の造語である。
 「経絡」とは「漢方医学で気血が人体をめぐり流れる経路」のことなので、外経絡とは人間の内部でなく、外部とのかかわりのすべてを指している。
 文中の言葉では、次のように記されている。

 自分と関係を持ち自分を取り囲む秩序を構成している時空間(とそこに存在するもの)


 となると「生きる」とは、外経絡を知り、選んでいくことにほかならない。
 そのための人間の見方として四つの気の型が記されていて、その点がこの著の前半の中心でもある。

 そこはさておき(と言っても結局つながるのだが)、個人的に「なるほどなあ」「そうそう」と思う記述がいくつかあったので、ピックアップして備忘録としたい。

 感謝という感情は、センスの問題であって、努力の問題ではないと思っています。

 これは実に深いように思う。外経絡の選択においても、自分の内面を大事にしないと無理が生じて、結局はうまく流れない。感謝とはその最たるもののような気がする。自分の感情をしっかり見つめることが、もとになっていく。


 声は、人間が時間をかけて完成させなければいけないもののひとつです。

 言わずもがなのことである。身体をテーマにしている以上、これを抜きにしては語れない。
 一番日常的であり、一番根幹的であること。
 唐突だが、改めて学校教育の責務を自覚する。


 面白い表現がある。
 子どもの頃の「悪い身体記憶」、これには様々な段階があろう、そして誰しもが多かれ少なかれ抱えていることかもしれない。
 その「傷」を癒すための一つの手段として「復讐が一番いい」と著者は書く。
 なんとなく物騒な話にも思えるが、それは目には目を、歯には歯を…というレベルではなく、こういう表現で提案している。

 大事なのは、復讐に市民性を持たせることなんです。

 簡単なことではないが、そういう市民性をつくり上げようとする社会が健全であり、困難な現実に立ち向かうことなのだと思う。

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