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心のスイッチを形づくるもの

2009年09月16日 | 読書
 『自分を育てるのは自分』(東井義雄著 致知出版社)

 「10代の君たちへ」という副題がついている。昭和50年代に中学生を対象とした講話の記録が出版されたものである。
 しかしそこで語られていることは決して古くはなく、平易な言葉ではあるが幼稚な内容ではない。

 どんな境遇にあっても自らの価値を見つけることをあきらめない、という信念が様々な例話をもとに語りかけられる。
 そのどれもが印象的であるが、例えば著者が師範学校で運動が何一つできず最後に入ったマラソン部で、びりになりながらこう思い至る件は、魂を磨いてきた者だけしか実感できないように読んだ。

 僕がびりっ子をとらなんでみい、誰がこのみじめな思いをせねばならぬ。それを僕が引き受けているのだと気が付くと、世の中がパッと明るくなりました。
 
 様々な事件、問題行動があったことが話の内容に盛り込まれている。その一つ一つを詳しく見ているわけではないが、人間としての生き方を違えた有様という括り方をしている。
 それは結局のところ「心のスイッチ」が入るか入らないかが境目であるという見方になる。進路について考え始め、社会が少し見え始める中学生の時期がその好適期であることは当然だし、その揺れ動く心に寄り添うように話が進められていて、惹きつけられた子も多かっただろうと思う。

 心のスイッチが 人間を
 つまらなくもし すばらしくも していく
 
 心のスイッチを自分自身で入れられるために、そういうきっかけを逃さないためには何が備わっているべきか、どんな下地が必要か…そのことは具体的な取り上げられていないが、教職としては一番考えてみなければいけないことだ。

 冒頭に出てくる死刑囚島秋人の話はあまりに有名であり、象徴的である。
 子どもにとっての教師の一言の重み、信頼できる人間がどこかにいることの強さ…それらこそスイッチを形づくっているのだという真実が改めて見えてくる。

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