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産婆のような仕事

2018年05月22日 | 読書
Volume103
 「『まだ見ぬもの』は、もともとその人のなかに存在しています。それにかたちを与えてこの世に引き出すのが教育者の役目です。そしてそれが誕生する瞬間に立ち会うのが、教師の醍醐味と言ってよいでしょう。


 数か月前の雑誌を見返していて、ページ端を折っていた箇所があったので、読み直してみた。
 上野千鶴子がゼミの受講生から「お産婆さんみたいな存在」と言われ、「そのとおり」と続けた言葉。


 教育の原則を考えるうえで、とても重要な要素が詰まっていると感じた。

 一つは、「まだ見ぬもの」がそれぞれの中に存在すると信じること。
 よく言われることでありながら、一番忘れられがちな気もする。常にそういう向き合い方をしていないと、失われていく感覚だと思う。

 そして、教育とは「それにかたちを与えてこの世に引き出す」こと。
 「かたち」ということが大きなポイントになるだろう。
 それは直接的には顕在化するものを指すが、かなり幅広くとらえるべきだろう。個によって様々な「かたち」があることに、教師は気づかねばならない。

 「誕生する瞬間に立ち会う」…それを何より嬉しがることができてこそ、教師としての仕事ができたと言っていいのではないか。
 「学びの成立」などという言葉もあるが、データだけでは見えない、腹の底にストンと落ちる感覚こそ本物だろう。

 そういう印象を持った実践を自分はいくつ思い出せるだろうか…

 わずかではあるが、今でもそれらは心の中で輝きを放っている。
 幸せなことだ。

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