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今こそ『チームの力』を読む②

2020年04月22日 | 読書
 【チームの力 構造構成主義による”新”組織論】(西條剛央 ちくま新書)

 当然ながらチームにはリーダーが必要であり、リーダー論はちまたにあふれている。
 この新書で述べられていることは、以前何かで読んだ内容と近いとしても、原理を起点に語られるので、気持ちがいいほど納得できる。
 例えば、次のような一節だ。

 「リーダーシップとは、(1)特定の状況下で、(2)自分を活かして、(3)チームの目的を実現するための技能ということができる。これがリーダーシップのメタ方法論というべき考え方になる」


 どんな優れた資質を持つ者も「長期間にわたり“よきリーダー”として統率できない」という。それは、リーダーが状況の変化に合わせて自分の性格を変えられないからであり、「成功体験の呪縛により自分の道を離れる気になれないから」とする。
 (今の国の現状に照らしてみると、見事に符合する気がしてならない)
 リーダーの位置にある者を、リーダーだからというだけの理由で従うことなど、少なくとも混乱のある時代には許されないことだとも思う。


 人は「果敢さ」と「慎重さ」のどちらかに偏っている、という論は納得できる。
 そこから、よく言われる「平時」と「非常時」のリーダー論が導き出されていると言えよう。
 フィクションには当然演出も多いが、「名将」の多くはいずれも去り際が鮮やかであることを思い起こす。


 ではそうした原理原則的な論理を踏まえながら、その悪条件を乗り越え、長くリーダーとして活躍できるのは、どんな人なのだろう。

 著者は、メンターや側近の存在の重さも語りつつ、決定的な点は「誠実さ」にあると述べている。

 リーダーの「関心」がどこを向いているか。
 その人の意思決定や動き方は、目的に沿ったものとなっているのか。

 美辞麗句をいくら並べても、結局のところ「心」は伝わる。その意味での誠実さが何よりチームの芯と成りえるのだと思う。


 「リーダーの人格に応じて組織の体質が決まる」

 これは、スポーツなどで脚光を浴びるチームなどが象徴的だろう。
 国や地方を統率していくべき組織の体質が、この非常時の動き方に足かせになっている例を、我々は目にしている。
 これらは、つまりリーダーの人格によると言い切ってしまうのはとても怖いけれど、一面の真実に違いない。

 未曽有の危機的状況を凌ぐのが精一杯だが、この点はしっかり頭にいれておきたい。


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