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雑談から表現の本質へ

2018年10月29日 | 読書
 広辞苑で「雑談」を調べるとね、「さまざまの談話。とりとめのない会話」と意味があり、その次に「ぞうたん」と書いてあるんだよ。何だろうと別の辞書にあたってみたら、古い読み方でなんと平安期の記録にあるそうだよ。江戸時代には「ぞうだん」という読みが出てきて、「ざつだん」と読むのはその後らしいね。


2018読了101
『雑談力』(百田尚樹  PHP新書)



 雑談は楽しいけど、「無駄話」とも言われたりする。あっ「四方山話」という言い方もあるね。とにかく「あちこち、さまざま、雑多」なイメージで、品のない言い方をすれば「妄談(ぼうだん)」「放談」「嘘話」「漫(すず)ろ物語」「口慰み」「鶯語(おうご)」なんて類語もあるくらい。そんなの「力」は必要なのかな。



 と無駄話を終えて、この本で人気作家が書くのは「人を引き付けるコツ」なので、雑談そのものではない。そうなると大体パターンは決まる。「起承転結が基本」「つかみが大事」「質問から入る」「数字は重要」…ポイントは「講演」の仕方と全く同じだ。要するに相手に対して「面白い話を披露する力」を指している。


 この新書の肝だと思った一節がある。「雑談について、多くの人が大きな勘違いをしているのは、『相手が興味を持ちそうな話をすればいい』と思っていることです。実はこれは全然違います。本当に面白い話は、『話し手が一番興味のある話題』なのです」…自分勝手で自己満足に陥ると思ってしまいがちだが、そのレベルを超えなければならない。


 『永遠の0』『風の中のマリア』『モンスター』等々、著者のほとんどの小説を読んできたが、その多彩な興味の持ち方つまり「作家自身が面白がる」ことに、ぐんぐんと惹かれて読み進めた印象も残る。つまり興味のエンジンをふかさないと、「操作」にはつながらない。表現の本質を突く一冊だ。とともに、たくさんの面白ネタも詰まっていた。

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