すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

信念を持つ「趣味」のパワー

2019年06月25日 | 読書
 新書は数多く読んでいる。選ぶ基準はいくつかあるが、比重として「著者」が一番大きいかもしれない。エネルギーを強く感じる人が多いようだ。もちろんそれにはぐいぐいタイプもあるし、深く静かなタイプもある。ほとんど活字からの印象に過ぎないが、それは文体に現れてくるように思う。そんな二冊だった・


2019読了63
 『沸騰!図書館』(樋渡啓祐  角川ONEテーマ21)



 武雄市長であった著者が「時代の寵児」的なイメージでバリバリ進めたときの記録だ。武雄市の大きな二つの問題に対して、当時の副市長が言った一言は問題の本質をよく表している。「市長、僕は病院問題、仕事としてやっていきます。市長は図書館問題、趣味でやってください。」そこにどう展開させるかの鍵がある。


 二つとも利用者視線なのは間違いないが、どれほどの切実さを抱えているのかで異なる。医療と文化という質の違いも大きい。しかし信念を持つ「趣味」のパワーは人間にとって生業のそれより強いかもしれない。著者の考え、進め方もそうだし、従来の図書館に関わる多勢の思いもそうだし、まさに沸騰していた。



2019読了64
 『本の「使い方」』(出口治明  角川ONEテーマ21)


 ここ数ヶ月、読書に関する新書等を数冊読んだ。その中で最も「読書愛」を感じる一冊だった。「使い方」と書名にあるが、一番強く感じるのは「向き合い方」だ。第三章の副題は「1行たりとも読み飛ばさない」。この精神が貫かれている。ただそれは、著者自身が何度も強調するように強制されて出来ることではない。


 「読んでみたい」と心を動かされるような本と出会うためには、そういう場に向かうこと、時間を持つことが必須である。自分の今の仕事の深さや広さを考えてしまう。ともあれ、この一冊は優れた読書案内になっている。紹介のあった数冊はすでに注文済みだ。読書の質に悩む私のような者には参考になった。