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欲望の新しい基軸の導入

2019年06月21日 | 読書
 無職生活をしていて、自分で出来ることはあまり業者に頼らずやりたいとごく普通に思った。それはお金と時間、あとは達成感的なことが絡むだろう。そこに自然保護、環境保全的な視点があっただろうか。残念ながらわずかだ。ただ実際に動いてみたからこそ、便利さに溺れている現在を考える機会はいくらかあった。


2019読了62
 『人にはどれだけの物が必要か』(鈴木孝夫  中公文庫)


 書名はトルストイの「人にはどれだけの土地が必要か」という寓話からとられたと前書きにあり、その筋も紹介されている。ずいぶん前にこの話は読んだ記憶がある。土地もモノもカネも手に入ると「もっと、もっと」とさらに欲しくなる。この限りない欲望とどう向き合うか。古今東西、たくさんの人が問うてきた。


 この著での結論として、「欲望の基軸」の新しい導入が示される。今までの「時系列の発展の判断基準」(昔より今、今より明日をもっと良くしたい)と「他者との比較による相対比較の基準」(隣より金を儲けたい、豊かになりたい)とは異なる、自分の行動が地球に対有害ではないかと問う「地球的原理」基準である。


 「地球にやさしい」はもはや常套句だ。しかしそれをどんなふうに行動化しているか訊かれれば、返答に困る。著者は徹底している。ゴミ拾いの習慣や頻度・量が半端ではなく、一般人の目から見れば尋常ではない。とても真似できるレベルにはない。だからこそ、論として「地球」を持ち出されても納得させられる。


 著者は読者にごみ拾いを強要しているわけではない。しかし、ここ半世紀ほどの間に爆発的に進んだ環境破壊の影響を無視して生活できなくなったことは誰も感ずるはずだ。だから一人がやったって…と思わず、出来る行動をして居場所たる地球を少しでも救おうと、言葉を尽くしている。その熱さに背中を押される。