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今年はどんな衝撃が―貞松・浜田バレエ団の創作リサイタル19

2007-10-09 22:14:42 | 舞踊
 あくまでもバレエの王道をまっすぐに進みながら、しかし王道をまっすぐに進んでいるうちに、むしろまっすぐに進んでいるからこそ、ときに大胆かつ革新的そしてスリリングなビジョンへ先陣切って踏み出していく、とこのように言えるのではないでしょうか。
 今年で19回目を迎える貞松・浜田バレエ団の特別公演「創作リサイタル」の舞台のことです。
 10月19日(金)と20日(土)にそれぞれ三つのプログラムが新神戸オリエンタル劇場で上演されます。

 神戸の暮れにはなくてならない「くるみ割り人形」はじめ「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」など、基軸はクラシックを得意とするバレエ団です。
 とりわけクララが訪れる雪の国や白鳥たちが踊る湖のほとりの幻想シーンは、そのピュア(純粋)で透明な表現の点で、今日このバレエ団の右に出るものは多分ないのではないでしょうか。
 そんなバレエ団のステージですから、創作といってもそこにはきっとオーソドックスな要素、むしろコンサーバティブ(保守的、伝統的)ななにものかが残るだろうと、まあ、そう想像するのが普通だとは思うのですが、それがぜんぜん違うのです。

 2001年の「眠れぬ森の美女」(眠れる、ではありません。眠れぬ、です。ご注意)では、ステージにびっしりと並べられたビールのケースに仰天し、夢遊者のユーモラスな動きに笑いましたし、2005年の「DANCE」では一転、宗教儀礼のようなダークスーツの厳かで激しい群舞に体ごと揺すられました、
 なかでも「DANCE」の衝撃波は神戸一都市にとどまらず、その秋の舞踊界を揺るがして、文化庁芸術祭の大賞(舞踊部門)までさらったのです。

 さて、ことしのプログラムは石井潤さん振り付けの「泥棒詩人ヴィヨン」、森優貴さん振り付けの「羽の鎖」、そして山崎敬子さん振り付けの「Do You Like The Piano?」の3本です。

 石井潤さんは新国立劇場の開場記念作品「梵鐘の聲」(1998年)で大きな注目を集めた、今日のバレエ界を代表する振付家で、「泥棒詩人ヴィヨン」(1989年)は芸術選奨文部大臣賞と舞踊批評家協会賞を受賞して、まさしく、ここにイシイあり、と大きなインパクトをもたらした作品です。ヴィヨンというのは15世紀のフランスに実在した人物で、強盗や殺人など悪行の数々を尽くしながら詩を書いたという怪物的な詩人のことです。

 「羽の鎖」を発表する森優貴さんは貞松・浜田バレエ団の出身で、1997年ドイツに渡り、現在はヴィースバーデンバレエ・トス・タンツカンパニーでソリスト兼常任コレオグラファー(振付家)として活躍しています。「Missing Link」(失われた環、2005年)でハノーヴァー振付国際コンクールの批評家賞・観客賞を受賞。2006年にはハノーヴァーバレエ・トス・タンツ・カンパニーで「恐るべき子供たち」(ジャン・コクトー原作)の振付を行っています。問題意識に満ちたみずみずしい作品が期待されます。

 「Do You Like The Piano?」の山崎敬子さんは石神井バレエアカデミー(東京都)の主宰で、貞松・浜田バレエ団の特別講師。松山バレエ団で多くの重要な舞台を踊り、同バレエ団の幹部を務めている人です。美しい作品になることでしょう。

 開演は両日とも午後6時30分。S席5000円、A席4000円。貞松・浜田バレエ団は078.861.2609 http://www.sadamatsu-hamada.com/


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