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ブログ版 シュプリッターエコー

なまめかしい魂 ――小牧徳満展

2020-08-23 15:11:00 | 美術
小牧徳満さんの作品展「木霊は語る」(2020年8月13日~23日)を神戸・元町のGALLERY 301(ギャラリー サンマルイチ)でみました。



「木霊」は「こだま」。「霊・魂(たま)」と「玉」は同語源だそうですが、小牧さんはいろいろの木の枝から優しくもなまめかしい玉の形を彫り出していきます。

中空に横たえられた細枝も、切ってきた枝をそのまま飾ってるのかしらと思ったら、よくみると先端が丸く削り出されています。

しっかりとした枝から、頭を思わせる形が首を伸ばし、不思議なことに目としか思えない位置に二つ節がついている作品があります。まさにいま突然、目というものを与えられ、それをいっぱいに見開き、驚いた様子でそこから外界をのぞきこんでいるといった表情。

隠れていた魂が、それも形のないものとしてではなく、魂の器官というべきものとしてえぐり出され、露出させられている、とても触覚的な作品たちでした。



さて、驚きの表情で世界に目を見張っているその「木霊は語る」という作品。スモークチーズを連想したのですけれど、つややかな樹皮と、きめ細かでいかにも滑らかなその断面に、カリンの木というのはきれいなものなんですねと思わず尋ねました。そのときの、小牧さんの生き生きとした様子――

カリンの樹皮の独特の色合い、木材としての特徴について、好きで仕方ないというふうに話してくださいました。

作家というのは、まずもって素材そのものを偏愛する人々なのでしょう。



(takashi.y)


高濱浩子さんの「私書箱1284」

2020-08-15 00:52:00 | 美術
美術家・高濱浩子さんの作品シリーズ「私書箱1284」がギャラリー島田オンライン・ストア(https://gallery-shimada.stores.jp/)で公開・販売されています。


高濱さんは、これを、たとえ「大の」と強調しても、単に「旅好き」といっていいものか、ほとんど旅に生きているような方ですが、インドに留学をしたり、ガウディのサグラダファミリア教会の建設工事に携わる外尾悦郎氏に師事したりと、ダイナミックな経歴の持ち主です。


先日もフィリピンへの旅を綴ったエッセイが雑誌「コヨーテ」に掲載されたかと思えば、NHKテレビの人気番組「サラメシ」に出演。神戸の神社の宮守としての生活も紹介されました。


テレビで紹介されたのは、働きに出ていたときにお母様が作ってくれていたお弁当のスケッチにその時々の思いを書き添えた「お弁当日記」でした。これは先日、神戸新聞でも記事になりました(https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202007/0013551800.shtml)。


今回「ギャラリー島田オンライン・ストア」で公開されている「私書箱1284」は、貿易商だったお父様の元に届いた切手を使った絵のシリーズです。ハガキ大の作品の中に実際に切手が貼り付けられており、そこへ高濱さんの鮮やかでどこか神秘的なイメージが重ねられていきます。


この「私書箱1284」については、「シュプリッターエコー Web版」に山本忠勝が書いた2008年の記事があります。ぜひお読みください。
→「高濱浩子 無限流動」 http://splitterecho.web.fc2.com/critiques.html#10071


ギャラリー島田 オンライン・ストアより



赤木美奈展 饕餮

2020-08-08 03:43:00 | 美術
「饕餮」の読みは「とうてつ」。
中国の伝説上の怪物の名です。
あらゆるものを貪り食う悪神だったのが、いつか災いも喰らう魔除けの役割も持つようになったそうで、このコロナ禍の世にこそ「描かねばならない画題だ」と赤木さんは書きます。



正体不明の、めいめいの境目も判然としない生き物、植物、そして作家の偏愛する粘菌がひしめきあう画面からは、むしろ死の臭いが濃厚に立ちのぼってきます。
画廊のオーナーによると、山野で拾った動物の骨を挽いて混ぜた絵の具が使われているのだとか。
実際、骨そのものに彩色した作品も展示されているのです。



だとしても、これは死の爆発的繁茂。
その筆致は力強く、ここでなされているのは死と生とがないまぜになった混沌のエネルギーの探究です。
蛆虫に、ウィルスに、私たちもまた食われるものであるということを否応なく思い出させ、喰らい喰らわれ、全体としてただとめどなく続いていく怪物じみた生命というもののイメージが、見る者に迫ってきます。

「赤木美奈展 饕餮」は神戸・元町の歩歩琳堂(ぶぶりんどう)画廊で8月12日(水)まで開催。木・金曜日は定休。

歩歩琳堂画廊のFacebook https://m.facebook.com/buburindou/
電話 078-321-1154

(takashi.y)