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ブログ版 シュプリッターエコー

上村未香さんのバレエ(執筆中)

2012-06-19 18:28:00 | 舞踊
 もう半年も前のこと、それどころかすでに去年の暮れのことなのに、おりにつけ鮮やかに思い出す舞台があります。
 バレリーナの上村未香(うえむら・みか)さんが出演した「くるみ割り人形」の舞台です。(2011年12月24日 神戸文化ホール)
 上村さんは神戸を拠点にしている貞松・浜田バレエ団のプリマです。
 ヒロインのクララを踊りました。

 踊りが透明だったのです。
 空気の精のようでした。
 生身のひとが踊っているとは、もうほとんど感じられませんでした。

 どのシーンを挙げるのがいいでしょう。
 むしろ、どんなつかの間のエピソードにも目をそそぐ値打ちがあるでしょう。
 ネズミの王様の大暴れにひやひやしているところでも、いきなり王子が現われてまだびっくりが続いているところでも、王子といっしょにお伽(とぎ)の国へ旅立っていくところでも。
 どのような細部でも、かの女はいつも瑞々(みずみず)しく、繊細で、軽やかです。
 まったく驚くべきことに、かの女の跳躍にはほとんど音が立ちません(ぼくは実際かの女のトウシューズの響きを一回も聴いたことがないのです)。
 舞台を横切っていく風なのです。
 微風です。

 くるみ割りの王子とドロッセルマイヤーが不思議な空気で対峙(たいじ)するラストの場面。
 少女クララは、王子の腕の中からまるで投げ出されるようにして、ドロッセルマイヤーの腕の中へ返されます。
 未香さんのクララは、なんと軽々と空中に浮かんだことでしょう。
 重力が消えてしまったようでした。(続) 

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