Lisa Dal Bello(#341)

2008年05月29日 | Blue eyed soul
Lisa Dal Belloと言うシンガーがいたのをご存知だろうか?1stアルバムがリリースされた1977年に、当時まだ19歳であったLisaはカナダの有名な音楽祭である【Juno Award】Most Promising Female Vocalistに選ばれている。正直当時Soulを聞き始めて二年目であった私にとっては、白人歌手、それもカナダ人がここまで歌う事は驚異であった。同じカナダ出身のCeline Dionがデビューする20年以上も前であったが、すでに当時白いAretha Franklinのように売り出されていたのである。LPの帯にはBoz Scaggsのレコーディングスタッフが全面的に参加!と言うようなコピーが書いてあったと思う。実際Aretha FranklinやChaka Khan、Stevie Wonder、Ray Charles等を聞いて影響を受けたようだ。
そしてまだそれ程有名ではなかったDavid Foster(やはりカナダ出身)のプロデュースで制作された。ただ驚いたのは、その後【TOTO】と言うバンド(L.A.の当時の若手スタジオミュージシャンで固めたバンド)がデビューするが、メンバー全員がこのアルバムに参加していた事だ。ただほとんどの曲のBassを弾いていたのはDavid Hungateではなく、TOTOにはのちに参加するMike Porcaroである。一曲だけだがThe CrusadersのRobert"Pop"PopwellがFUNKなBassを弾いている(B-3)。

Lisa Dal Bello/1st


とにかく19歳ながら歌は完璧に近い上表現力も素晴らしい。作詞曲は一部David Fosterとの共作であるが全曲セルフであり、コーラスアレンジも自分で、大半は自身でオーバーダブしている。さらにDavidとストリングスアレンジを共同でやると言う才媛ぶりを発揮している。曲によってはかなりSoul寄りの楽曲があり、声、唱法的にもまるで黒人シンガーと聞き間違える程の太い声質と広いレンジ。
A-1の"Look At Me"はFUNK Rock調の曲で、いきなりGrowlを聞かせてくれる。サウンド的にはAOR的だが、歌は完全のSoul系の歌い回しであり黒人としか思わないだろう。 今でこそJoss StoneのようなUK出身の白人少女が出現し、黒人のように歌う白人がいてもけして不思議ではなくなったが、30年前には本当に珍しい事であった。例えば少し前に取り上げたCold BloodのLydiaあたりを聞いてもバンドの音がFUNKでも絶対に黒人とは思わないだろう。

A-2はAOR系の美しいバラードで、曲によって声質を変えて来る技量がまた憎い。アップもバラードもばっちりこなすのである。
A-3はポップなアップテンポなナンバー"My Minds Made Up"でキレの良い歌が聞ける。JeffのDrs.がまた小気味いい!80'sにはすっかり引っ張りダコになってしまったのも頷ける、素晴らしいセンスである。A-4も同じくアップナンバー。
A-5、B-2、B-5はSoul色が薄いバラードナンバーであるが、10歳頃にElton Johnに影響を受けて作曲を始めた影響が残っているのかもしれない。
B-3の"Daydream"はちょっとAverage White Bandを思わせるミディアムFUNKナンバー。一番ではオクターブ下で歌っておいて二番では上で歌ってしまうこのレンジの広さとパワーは、まるでChakaやArethaのようでありまるで白人女性には聞こえて来ない。B-4の"Milk & Honey"はアップテンポのFUNKナンバー、正直こういったアップナンバーでのLisaのシャウト、高音、リズムのキレは本当に素晴らしく、さらに何気にホイッスルボイスを使っているが、気がつかない程自然であるのがまた凄い。

本国カナダではそれなりに成功したようだが、全米のチャートではパッとしなかった。その理由としては、当時は白人アーティストの曲が黒人のラジオ局の電波にのることはほとんど無かった。R&Bチャートで成功した白人アーティストは、たいていジャケットに顔や姿を載せずに売り出し、まんまと売れてから顔を出していたのである。史上No.1 一発屋Wild Cherry、Average White Band、Bobby Caldwell等はみんなそうだった。

この後'79年に2ndアルバム『Pretty Girls』を発表するが、実はこのアルバムの存在自体知らなかった。もちろん聞いた事が無いので内容も良くわからない。ずーっと'81年発表の3rdアルバム『Drastic Measures』を2ndかと勘違いしていた。これは輸入盤で所有しているが、これは思い切りRock系の音になっていて驚いた。Lisa=Soul的イメージが自分の中で確立されていたので、かなりショックであった。まあもちろんジャケを見ればサウンドが目に浮かぶが...
Drastic Measures
B0000C6IAV
Olivia Newton Johnが『Physical』を大ヒットさせた時期であり、Seana Eastonが頭角を表して来た時期であるから、実力の割にそれ程成功していなかったLisaにとっては、生き残りをかけた路線変更であっただろう。これで失望した私は二度とLisaを追う事は無かった。しかし、2ndとこの3rdは両者共にRufusの初代Guitarist、Al Ciner、とやはりRufusのプロデューサーでもあったBob Monacoのプロデュースであった。もう少し黒いサウンドになっても良かったのでは?まあもちろん本人は納得してなかったようで、一度アーティスト活動を停止していた。1984年に名義を【Dalbello】に変更して三枚のアルバムを残しているが、Song Writer、Producerとしても活躍している。

早すぎた天才少女【Lisa Dal Bello】、悲運のCanadian Soul Singerである。





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2 Comments

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中古 (1-SHOW)
2008-05-30 02:24:34
Lisa Dal Belloは、全く存じませんでした。今は中古しか流通がないようですねー。残念。

Wild Cherryの【史上No.1 一発屋】という形容に笑えました。
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1-SHOWさん (hidekichi)
2008-05-30 19:37:43
すでに廃盤なんですね~。
復刻した事自体すごいですが…
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