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 本は私の人生の友・・・

『雪とパイナップル』

2009年08月17日 | 
著者 鎌田 實

チェルノブイリの放射能汚染で白血病になった少年と、日本からやって来た若い看護師との心の交流・・・
それは8000キロを越えて生まれた小さな希望の物語でした。
「人間は理解しあえる」
子どもたちに命の切なさ、大切さを伝える絵本です。

夫が子どもの頃、病気になると父親が当時高級品だったバナナを買ってきてくれ、それを食べられるのが病気になったときの楽しみだったとか。
著者の鎌田さんも同じ年代で、バナナには特別な思いがあったようです。

経済が崩壊して、とても貧しい国になっていたベラルーシ共和国に住む白血病の少年は、まったく食事がとれない状態でした。
日本からやって来ていた看護師さんは、少年が唯一食べたいというパイナップルを、マイナス20度の雪の中、探しまわります。

>アンドレイのパイナップルは、50年前の日本のバナナのような存在なのかもしれないと思った。
50年ほど前、ぼくらが子どもの頃、たまに食べたバナナにも力があった。
たしかにあの頃のバナナには命に力を与えてくれる何かがあった。
不思議だと思う。
今、日本で、バナナを食べながら、人生のことを考えたり、将来の夢をふくらます人なんていないと思う。そういうものだ。
時代や場所や人との関係のなかで、物の価値や力は変わるものなのだ。
50年と8000キロの時空を超えて、雪のなかで探しつづけられたパイナップルには力があった。
少年に生きる力を与え、少年の命を救った。

>わたしはアンドレイが病気になってから、なぜ、わたしたちだけが苦しむのかって、人生をうらみました。
原子力発電所の事故のことを秘密にしたこの国の指導者をうらみました。
放射能のことを知っていたら、黒い雨のなか、アンドレイをわたしは外に連れ出さなかった。
人生は意地悪だなあって思った。
何も悪いことをしていないのに。
生きている意味が見えなくなりました。
でも、ヤヨイさんのおかげで、わたしのなかに、忘れていたものがよみがえってきました。
それは感謝する心でした。
人間と人間の関係はまだ壊れていない。
わたしたち家族の内側に、新しい希望がよみがえってきました。

>存在しない、「青い鳥」を探す。
チルチル、ミチルのように。存在しないはずの幸せの鳥が、実は自分の心の内側に存在していることに気がついた。

>人とのつながりのなかで生きるとき、幸せを感じたり、不幸せを感じたりするのではないか。

以前、鎌田さんの講演で、このお話を聴いたことがあります。
でも、聴いたといっても要約したお話でしたので、本を読んでみると改めて感動することがたくさんありました。
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2 コメント

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鎌田 實さん (Poke)
2009-08-19 19:26:46
ソルトさん、こんばんは。
この本の表紙を見て思い出しました。以前、鎌田さんがテレビに出演されていた時にこの本の話をされていました。手帳に題名を走り書きして、すっかり忘れていましたが^^;
確か苦労なさって医学の道に進まれたことなど、子どもの頃のお話が多かった記憶があります。もしかして「わたしが子どもだったころ」の番組かもしれません。鎌田さんの著作は、色々なことを教えてくださるので図書館でつい探してしまいます。。

今「きのうの神さま」読んでいる所です。『ディア・ドクター』を観る前に図書館の予約の順番が来てしまいました。手に取ってもしばらく迷っていたのですが、結局読んでから観ることに決めました。せっかくソルトさんの記事も読むのを我慢していたのにな。。
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Pokeさんへ (ソルト)
2009-08-19 22:56:36
こんばんは。
鎌田さんは今、イラクで医療支援の旅をしているようですよ。
養父母に育てられたとのことですが、実の親でなくても、愛情を持って育てられたら、立派な人になるんですね。
すぐに読めてしまう絵本ですが、内容は深かったです。

私も『きのうの神さま』を読んでから映画を観ましたが、映画もとっても良かったですよ。
読まずに観るか、迷ってしまいますよね。

明日から一泊で信州方面に行ってきますね。
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