著者 俵 萠子
俵さんは、去年の11月、77歳で亡くなりました。
突然のことで驚きました。
この本は、亡くなる直前まで月刊『ベターホーム』に書き続けられたものに、「まえがきにかえて」を樋口恵子さん、「あとがきにかえて」を吉武輝子さんが書いたものです。
50代で陶芸を始め、赤城山の中腹に「俵萠子美術館」を作りました。
姉達と何度か美術館を訪ねたことがあります。
美術館で俵さんと直接話したことのある姉は、気さくな人だったと言っていましたが、エッセーや講演会での私の印象は、“頑張る強気の女性”的イメージでした。
でも、この本を読んで、印象が変わりました。
人間だれでも、弱い面もある、ということを思いました。
ずうっと前に個展で購入した俵さん作のお茶碗で、最近ご飯を食べています。
箸置きは、可愛がっていた犬の「クーちゃん」がモデルです。
>むかし、若かった頃、私は、健康と食欲は、あって当たり前だと思っていた。
最近は、違ってきた。
その日が健康で、食事を「おいしいな」と思えること。それは、とても幸せなことなのだ。そう思うようになってきた。
そうなると、幸せの量は増える。一日に何回も、幸せだと思うことができる。
ひょっとすると、年をとるということは、幸せの量が増えることなのかも知れない。それに気づく頃には、寿命が終わる。皮肉なお話である。
>五十五歳の免許挑戦。「もうダメだ。この年では・・・」途中、何百回も、そう思った。
そのたびに、でも、来年はもう一歳、年をとると思った。考えてみれば、きょうより若い日は、もう二度と来ない。
>いちばん美しい時、いちばん輝いている時には、自分で気がつかない。
>二十代ばばぁに七十代娘。つまりね、なんの好奇心も持たなくなった二十代はすでに老いの真っ只中。七十代でも好奇心満々は押しも押されぬ娘盛り。
ご冥福をお祈りいたします。