FF11&14『オス猫日記』

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煉獄

2006年06月08日 02時12分06秒 | 駄文
「――!!」
 人ならざるものの断末魔が響く。獣の咆哮にも似たそれは、薄暗い広間全体に反響し、やがて空間に溶けるように消えていく。
 【ADAM】に死はない。敗北し、活動不能になった【ADAM】は、その全身を構成するエリクシルスキンの結合を失い“融解”する。その後、すべての蓄積を失った敗北者は、最下層にて再構成される。かくて、再び身一つでこの“煉獄”を上ることになるのだ。

 それは永劫に続く戦いの輪廻。

 この場において勝利者としての生を勝ち取った【ADAM】。【GRAM】のコードをもった彼は、そんな取り止めのない思考を行っている自分に気づき、それをカットした。代わりに、全身のエリクシルスキンに信号を送り、状態をチェックしていく。
(――異常無シ。特ニ問題ハ見受ケラレナイ)
 それだけを確認すると、足先を広間の出口へと向ける。先ほどの戦闘で負った傷は塞がっていた。――【ADAM】が最強の兵士たりうる理由のひとつ、不死身とも言える自己再生能力である。【ADAM】の全身を構成するのは、特殊液体樹脂エリクシルスキンのみであり、それは一旦結合を解かれ人としての形を失おうとも、やがてもとの形状を取り戻す。
 文字通り。【ADAM】は死なないのだ。

 【GRAM】が前に立ったことにより、ドアが開く。その向こう側に覗くのは狭く長い通路だ。
 そのまま出口を潜ろうとした【GRAM】は、言葉にできない違和感を感じて足を止めた。
「……?」
 不可解だ。と、【GRAM】は思考する。何ゆえ、自分は足を止めたのだろう、と。
 広間内をサーチしてみるが、違和感をもたらすようなものは見つからなかった。光量を抑えた照明に照らされて、いくつものコンテナの影が浮かび上がる。広間の地面には、先ほど【GRAM】が屠った名も知らぬ【ADAM】たちの残滓がわだかまっているだけだ。

 ――しかし、

 何度確認しても、異常は見受けられないというのに。【GRAM】の中の“何か”は違和感を感じ続けていた。

 ――俺は知っている。この「空気」を。この危険な「空気」を。

(――「空気」? コノ違和感ハ、ソンナ不明瞭ナ根拠カラ来テイルノカ)
 自分の中に複数の思考を感じながら、【GRAM】はもう一度、広間内を見回す。
 時たま気づく、【ADAM】としての自分には存在しないはずの“自分”。アーカイブに存在しないはずの“それ”は、突然に表れては【GRAM】に不可解な行動を取らせる。明確な根拠を見出せない行動。しかし、その行動を選択したことにより生き残ることのできた場面があったこともまた、事実だった。
(シカシ、ヤハリコノ広間ニ異常ナド――)
 そこまで考えたところで、【GRAM】はひとつの事実に気づいた。
(【エリクシルスキン】ノ量ガ、計算ト一致セズ!)
 同時に、向かって右手側のコンテナの陰に、一瞬浮かび上がった電光を捉える。
「!!」
 【GRAM】は思い至る。こちらの感覚機能に働きかけることによって、電子的にステルス効果を得る武装――感覚を光学以外の部分に頼ることの多い【ADAM】相手だからこそ通用する、そんな武装の存在に。
 判断は一瞬。行動の制限される通路ではなく、広間の中央へと向かい地面を蹴る。
 感覚機能を光学に切り替えながら、相手の予測位置から見て陰となる、左手側のコンテナの裏へ飛び込む。その後を追うように、地面や壁で火花が跳ね、穴が穿たれる。
 弾丸の掃射。その間隙を縫うようにしてコンテナの陰を飛び出した【GRAM】の眼が捉えたのは、両腕を機銃へとシフトさせた一体の【ADAM】の姿。ステルスに割り当てたのであろう頭部からは、余剰熱でオーバーヒートを起こしていることを示す炎が舌を覗かせている。
 【ADAM】が動く。両腕のエリクシルスキンを変質させて生み出した機銃で【GRAM】をポイントし、弾丸を吐き出す。先ほどまでばら撒いていた速射弾とは違い、盾にしたコンテナごとこちらを穿つつもりで放たれた高速弾だ。
 【GRAM】は跳躍した。一瞬だけ身を縮めて力を溜めると、それをバネに宙へと。見るものの視界に残像を残すほどのスピードで飛び出したその足先をかすめ、コンテナを突き抜けた数十の弾丸が壁を穿つ。
「ッ!!」
 次の瞬間。射撃直後の反動を無視するようにして、強引に両の腕を振り上げた【ADAM】は、跳躍の頂点に差し掛かった【GRAM】を捕捉した。
「空中デハ、自慢ノ速度モ活カセマイ!」
 両腕をさらにシフトさせる。もはや弾丸をばら撒く必要もなく、ただ瞬間の威力のみを求めた武装へと。そして完成した長大な砲――対戦車ライフルを【GRAM】へと向け――、
「!」
 空中の【GRAM】。その右腕がシフトし、先端から一条の光鞭を打ち出す。【ADAM】の頭上を疾ったそれは、【ADAM】の背後に立つコンテナに突き立つと、一気にその身を縮めていく。本来は対象を引き寄せる目的で使用される武装である光鞭に引かれ、【GRAM】が空中を疾る。だが、
「誤差ノ範囲内。修正可能!」
 叫び、【ADAM】が動く。胴体部を覆っていたアーマー。それがほどけるように展開したかと思うと、砲口を背部に負ったレールガンへとシフトする。その砲口は【GRAM】とコンテナの間、双方を結ぶ光鞭の中間へと向けられる。
「自ラ射線ヘト飛ビ込ムガイイ!」
 撃った。電磁加速された小さな弾丸が、必殺の威力をもって【GRAM】の向かう軌道上へと飛ぶ。
 そして――【GRAM】が左腕から放った重力塊が壁面へと激突した。
 透過するすべてを歪ませる黒い塊は、【GRAM】の向かう先でも、【ADAM】の立つ場所でもなく、【GRAM】の進行方向に対して平行に立つ壁へと突き立った。
 着弾の音は飛沫のそれに似る。瞬間すら凌駕した速度、刹那に展開した重力の檻は、その中心へとすべてを向かわせる。
「!?」
 己の立ち位置すら揺さぶられるような感覚。反射的に両手をついて地面の存在を確認した【ADAM】の頭上。重力塊を“下”とした振り子運動によって弾丸を回避した【GRAM】が飛ぶ。
 重力塊の消失は一瞬。重力の乱流に翻弄されるようにして宙を舞った【GRAM】が、【ADAM】の背後へと着地する。

「ォォ……!!」
 名も無き【ADAM】が吼え、

「……ッ!!」
 【GRAM】の名をもつ【ADAM】が疾る。

 交錯は一瞬。
 右腕に刃を生んだ二体の【ADAM】が馳せ違い、そして――、


 ――【ADAM】の存在を察知して、ドアが開く。その向こう側に覗くのは狭く長い通路だ。照明は最低限。どこまでも薄暗い直線は、その果てにあるものを闇に覆い隠す。
「……勝利して、その先に何がある……?」
 背後に、【ADAM】の“融ける”のを感じながら、【GRAM】は我知らず呟いていた。

 彼は一歩を踏む。更なる“煉獄”へと続く一歩を。




 ここは“煉獄”。
 永劫に続く戦いを運命づけられた人形たちが踊る、酷く滑稽で、どこまでも哀れな「世界」である――。







 うーん。思いつきで書き始めたらこんなに長くなっちゃったー。

 って感じですかねぇ?

(自分の無計画で後悔したりせんのか? 主は)

 まあ、どうせ「.hack//Roots」を見るので起きてる時間帯ですし。そこまで後悔ってこともありませんねぇ。

 というか、これ書いてなかったら絶対忘れてましたね。

(その程度の扱いのアニメを見るために、わざわざこんな時間まで夜更かしか。解らんのぉ……)

 .hackは裏設定とか豊富で楽しいんですよ。アニメ自体が好みに合わなくとも、たまに出て来る本編に繋がる設定とか、前作に繋がる設定とかを見つけるのは楽しいんです。

 ……でもまあ、別に無理して見ようと思うほどのあれでもないですけどね。忘れて寝ちゃってたとしても、あんまり後悔しない程度の扱いですし。

(ますます解らん)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やっぱり、感想書いた方がいいのかしら?w (メル)
2006-06-15 17:15:53
良くわかりません。(感想じゃないなw)

まぁ、元ネタとか世界観とかサッパリだから当たり前ですけどw



でも、なんか、書き方は凄い上手い気がしますね。

良くわかんないから気がするだけですけど。

やっぱり、いろんな小説読みまくってると、上手く見える書き方ってのが身につくんですかね。
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どうもです (sobael@管理人)
2006-06-15 22:26:48
 感想が浮かばなかったときは放置で構いませんよ?w



 実を言うと自分も世界観とかさっぱりです(ぇ

 というか、そういった「設定」自体オマケみたいなものなので。このゲーム^^;



 適当に短い駄文でも書こうかなー。と思って書き始めたら予想外に長くなってしまって(戦闘を書こうとしたのが間違いだったかも知れません(;・ω・))。おかげで最後の方は「焦り」が丸見えになってしまって、ちょっと反省してます(;・ω・)



 呆気なく終わった方が「煉獄」の雰囲気を出せるような気もするので、そこは別にいいんですけどねー。

 雰囲気を匂わせることだけはうまく行くことの多い、オス猫なのですw
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