街と街を繋ぐ大きな街道を、三人の旅人が歩いている。
「なぁ十六夜。次の街に着いたらまず何がしたい?」
石畳によって舗装された広い道。
小さな一人を挟んで歩く片側は、白い肌に碧い瞳、陽光にきらめく黄金色の髪の、背の高い青年。端正な顔立ちと優しげな眼差しは、全体的な印象と相まってどこか高貴な雰囲気すら醸し出している。
「んーとね、んーとね、お菓子が食べたいなっ。ジェンドはー?」
背の高い二つの影に挟まれるようにして中央を歩いているのは、黒く大きな瞳に同じ色のふわふわ髪、ぷにぷにほっぺの可愛らしい少年。くるくるとよく動く瞳は、それ自体が光を放っているかの如く輝いている。
「そうだな…。私は鍛冶屋に寄っておきたいナ」
少年を挟んで、青年の反対側。褐色の肌に紫色の鋭い瞳が印象的な、美貌の剣士が歩いている。その全身が醸し出す雰囲気は、紫の瞳に象徴されるように刃にも似た鋭さを思わせる。
「ま~た駄目にしたのかあ? 2つ前に立ち寄った街でも打ちなおしてもらってたよな?」
呆れ顔の青年が尋ねるが、剣士は「フン」と鼻を鳴らしただけで、まともに取り合おうとしない。
いつものことなのか、特に気を悪くした風もなかった青年だったが、不意にその顔が少しだけ意地の悪い笑みを浮かべたものとなる。
「ひょっとして、ジェンドってば、使い方が悪いんじゃねーのか?」
その言葉に、剣士の尖った耳がぴくりと動く。
途端にどこか剣呑な空気を纏い始めた剣士だったが、しかし表面的には気にした風もなく、無視の態度である。
しかし、
「ねーカイ。どうして鍛冶屋さんに行くことが多いと、使い方が悪いの?」
少年の無邪気な質問。
剣士の耳が再び動き、青年の笑みが少しだけ深みを増す。
「剣ってのは、使い方が下手だとすぐに駄目になってしまうのサ。ジェンドがすぐに鍛冶屋に行くってのは、ジェンドがすぐに剣を駄目にしてしまうってことだろう?」
と、青年はもっともらしい口調で少年に語っていく。
段階を踏んで話を進め、いつの間にか相手を自分のペースへ引き込んでしまう話術である。
「私の剣がすぐ駄目になるのは、私ばかり戦わされているからだろーが。貴様の剣がなかなか鈍らないのは、貴様が働かないからだっ」
流石に無視できないと判断したのか、剣士が青年に反論する。
しかし、この反論に青年は余裕の表情を崩さない。
「ん~、それはちょっと違うゾ? 俺が何かしようとする前に、ジェンドが一人で突っ込んでいっちまうんじゃないか」
青年のさらなる反論に、剣士がわずかに言葉に詰まる。
事実として、道中で危険な魔物にでくわしたとき、真っ先にその存在に気づいて切りかかっていくのは剣士である。青年が剣を抜き加勢しようとする頃には、剣士の足元には瞬く間に切り伏せられた魔物の死体が転がっているのが常だ。
する仕事がないのでは、青年とて働きようがない。
「~~っ。とにかく、私が悪いんではなく、剣が悪いんだ剣が!」
半ば吼えるように言ってそっぽを向いた剣士に、青年が笑う。
すると、二人の間でおろおろとしていた少年が顔を上げた。
「――うん。やっぱり剣はよくないよねっ」
突然の少年の同意に、「は?」と剣士が振り向く。青年の方はと言えば、「ん?」と、興味深げに少年の言葉を待っている。
「魔物さんをいじめなければ、鍛冶屋さんに行かなくってもいいんでしょ? 鍛冶屋さんに行かなければ剣は使えないんだから、魔物さんをいじめなくてもすむんだよね? だから、そうすれば鍛冶屋さんに行かなくてもいいってことで……えーっと、えーっと」
言っていて、自分でもこんがらがってきたのか、少年が言葉に詰まる。
それを見ていた青年が、「なるほどね」とひとつ頷いて、少年の言葉を継いだ。
「確かに、魔物と戦わないで済むなら、それに越したことはないよな。無駄な戦いを避ければ、鍛冶屋の世話になるための出費も少なく済ませられるし」
青年の言葉に、反論したのはやはりというか、剣士だ。
「ふん。そうは言っても、私たちを襲ってくるのは向こうダロ。襲われても無抵抗で、黙って食われろというのか?」
剣士の言葉はともすれば意地の悪いものだが、しかし紛れもない事実の一面というものだ。
「お話すれば、きっと魔物さんだって分かってくれるよ」
少年は心の底からそう信じているようであり、その瞳はどこまでも真っ直ぐな光を宿している。
「そうだな。そうできる世の中にするためにも、早いとこ邪神竜に会いに行かねーとナ」
そんな少年を見る青年の眼差しは優しく、そしてどこか眩しいものを見るようなそれだ。
街と街を繋ぐ大きな街道を、三人の旅人が歩いている。
元聖騎士の青年は友の信じた理想を確かめるために、
迷子の少年は故郷を探し、魔物たちと友達になるために、
ダークエルフの剣士は記憶を取り戻し、仲間を滅ぼした魔物に復讐するために、
それぞれの目的を抱いた三人の旅人が、広い街道を行く。
その旅の終わりは、いまだ見えることはない――、
○
さぁて、というわけで、勢いと愛だけで書いた幻想大陸のSS(モドキ)でございます。
(幻想大陸なんか? それにしては、一匹足りんようじゃが…)
んー、ですが刻の大地というよりは幻想大陸批准なんですよねぇ色々と。というのも、自分の中の三人のイメージが幻想のが強いからなんですけど。
刻の大地も大好きなんですが、完結してないだけにあちらはまだ動かしにくいといいますか~。シリアスな作品が書けない人間なんで、自分(;・ω・)
(まあ確かに、主ではあの雰囲気は出せんじゃろうが)
『小説 刻の大地』とかいいですよね。見事に雰囲気が出てて。
刻の大地をノベライズするなら、あのくらいのレベルな作品を書かないと! っていう気持ちみたいのもあったりで、やはりどうしても、自分が書くと『幻想大陸』よりになります(´・ω・)
(確か同じ作者で『幻想』のノベライズも出とったと思うが…)
はっはっは。当然確保済みですとも。
そちらも「これぞ幻想っ!」って雰囲気が出ていて、『刻の大地』との雰囲気の差を見ると作者の方に対する尊敬の念が高まりますね。
同時に、作者の方の『夜麻ワールド』に対する、『三人組(+一匹)』に対する愛の深さみたいなものを感じて、とても幸せな気分になります。
やはりいいですね。『幻想大陸』は。
漫画も、小説も、二次創作だって、見れば幸せな気持ちになれます(*・ω・)
願わくば、自分の作品でもそういうレベルに達したいところですが……。
(まーだまだ。じゃな)
全体的に実力不足っ!
終わり方はブツ切れだし、それ以前になんか色々と自分に対する不満と恥ずかしさがーーっ!!?
……何とか精進していきたい所存ですな(´・ω・)w
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