読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「マトリョーシカ・ブラッド」

2018年10月03日 | 日記
呉 勝浩(徳間書店)

 久しぶりで堪能したミステリだった。先ずは、人物造形が面白い。語り手が主に二人で、それぞれの性格描写がいい。非常に個性的だ。ちょっと映像的な印象を受けるが、そう遠くないときに映画化されそうな気がする。若手のイケメン俳優や渋い脇役が想定される。
 ストーリーの展開がジェットコースター的で、最後のどんでん返しに意表を突かれる。

 内容紹介は(出版社の文章を引用)
『神奈川県警に匿名の電話があり、夜勤の彦坂刑事は陣馬山に駆けつけた。五年前に失踪した男の遺体が山中から発見される。白骨化した遺体の傍らにはマトリョーシカが埋められ、透明の液体の入った瓶が入っていた。被害者は5年前、新薬の副作用で患者を死亡させたと糾弾されていた大病院の元内科部長・香取だった。そして第二の殺人事件の現場にもマトリョーシカが。その意味は?白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞した著者が贈る、書下し警察小説。

 著者プロフィール
 呉勝浩
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒業後、アルバイト生活をしながら執筆。2015年『道徳の時間』で江戸川乱歩賞受賞しデビュー。2016年、『ロスト』で大藪春彦賞の候補に。17年、『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞。2018年『ライオン・ブルー』が山本周五郎賞の候補に。今、最も注目の作家の書き下ろし長編 』

 光文社の雑誌の書評です。
『猛暑も忘れて、久方ぶりにずんとこたえる警察小説を読んだ。
 物語の発端は、神奈川通信指令センターに、〈五年前、陣馬山に遺体を埋めた〉という匿名の電話がかかってきたことからはじまる。それだけでも剣呑なのに、通報者は、〈埋まっているのは香取冨士夫だ〉と言うではないか。七年前、東雲総合病院で、治療中の癌患者五名が急性多臓器不全に陥り、立て続けに死亡する、という事件が起きた。その原因といわれたのが、ムラナカ製薬開発の抗癌剤サファリであり、病院はこの新薬を積極的に導入していた。病院側に自殺者まで出したこの一大スキャンダルのキーパーソンが、五年前に失踪した内科部長・香取だったのである。地中から掘り起こされた白骨死体は、果たして香取であり、死体の傍らには、謎の薬物の小瓶が納まったマトリョーシカが埋められており、さらにMというこれまた謎の文字が――。
 続いて八王子で、次の死体が発見され、ここにも第二のマトリョーシカがあり、その中にはとんでもないものが隠されていた。香取の失踪にある事情から負い目を感じている彦坂刑事をはじめとする神奈川県警の男たちと、個性豊かな警視庁の一匹狼たちが、反省から和解へ、そして事件解決へと向かうダイナミックな展開は読んでいて興奮させられる。
 また、犯人側から題名をつけるならば、本書は“哀しみのマトリョーシカ”であり、謎解きの興味と、人間ドラマが読みごたえを倍加させている。
 [レビュアー]縄田一男(文芸評論家)
 光文社 小説宝石 2018年9月号 掲載  』

・・・作者が映像の知識をお持ちなのか、展開や人物像が「映像」に結びつく。ミステリファンには大いにおすすめしたい。
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