読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「図書」2016年6月号

2016年05月31日 | 日記
雑誌です。出版は岩波書店。
しばらく続いている表紙の写真が面白い。科学写真家の伊地知国夫さんの作品。今回は、「水滴の落下と跳ね返りの音」。この解説を読むと、たかが?水滴だけどその形や音の出る過程など奥が深いことに驚く。
もう一つは、連載の斎藤美奈子氏による『文庫解説を読む』。これが、あの左がかった(?)岩波で掲載されているなんて! そのことだけでも感動もの。今回、取り上げたのは「戦争文学」なんですよ。
冒頭にあるのは百田尚樹の『永遠の0』。ここから始まって、「二十四の瞳」「火垂るの墓」や「ビルマの竪琴」・・・これらの文庫解説をひも解く。
そして、『永遠の0』の解説が児玉清で、それまでのかつてのベストセラー戦争文学の解説と比較して「・・・知識人の苦悩であれ、死者への鎮魂であれ、私小説であれ・・・まったく日本的な文脈の中で書かれ、消費されてきた・・・解説もそれを自明なこととして、狭い世界に閉じこもってきたのではあるまいか。『永遠の0』の解説の力強さを見てほしい。これじゃ負けるわ。読者への吸引力でも、読者の数でもね」ですよ。
傑作な比較論でした。どこかでお手に取ってごらんください。わずか2ページ。お勧めです。
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「民警」

2016年05月30日 | 日記
猪瀬直樹(扶桑社)

都知事だった猪瀬氏の作家復帰第一作との触れ込み。傑作とは思わないけど、やはりノンフィクション作家。これだけの本を書けるのですね。
冒頭は、なんだか、スカスカな話かと心配したけれど、だんだん様になってきた。
素人で何にも知らなかったけれど、セコムの創業以来の経緯や、綜合警備保障が警察官僚OBが作ったなんて読まなければ分からなかった。
それにしても、今や、警察の2倍近い雇用人員がいたり、高齢化社会で、老人の介護や見守りサービスなどへ進出も図っているようだ。ちょっと瞠目すべき職業ですね。

内容紹介です。
『この国を守るのは「官」ではない。
テロに戦慄する現代日本と地続きの"知られざる"警備業の歴史とは?
セコムとアルソックーー1964年東京五輪を契機に現れた、 二大民間警備会社の勃興と確執。
2020年東京五輪を摑んだ作家が緻密な取材と卓越した視点で、 隠された戦後史を照射し未来を予見する。

(あらすじ)
テロへの不安、
日本の安心・安全は誰が守るのか?
1962年、日本初の民間警備会社・日本警備保障(現・セコム)を起業した二人の若者は、1964年の東京五輪で選手村の警備を一括受注し、脚光を浴びることとなる。そして、その東京五輪で選手村の警備をセコムに発注したのが、のちに綜合警備保障(アルソック)を設立する警察官僚だった。
「民」と「官」ーー。
出自と起業の思惑も対照的だったが二社は、永山則夫事件など時々で交錯。歴史の奇妙な因縁に縛られていくーー。
日本を防衛する軍隊として23万人の自衛隊が存在する。国内の治安は24万人の警察官があたる。彼らのために国民は税金を支払っている。いっぽう民間の警備員数は警察官の2倍、50万人余である。日本の治安は、いまや「3兆円産業」に拡大した民間警備業市場の力を無視することができない』

勉強になりました。
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「なずな」

2016年05月26日 | 日記
堀江敏幸(集英社文庫)

最近、どこかの書評にあって、手に取って読み始めた。どこかで読んだストーリ-と思いつつ読む。
ずいぶん前に、やはり既読であった。
しかし、これがじんわりと沁みてくるお話。
ストーリー展開で思い出したのだが、主人公の赤ちゃんの『ナズナ』ちゃんの描写、伝わる感触がやっぱりいい。再認識した。

親になっても夢中の子育て時期では分からないことも多い。個人的な話だが、今や孫をゆっくり観察できるようになって、この『ナズナ』の良いところが分かる。

内容紹介は
『生後2ヶ月の女の子と過ごすイクメン小説!
「世界の中心は、いま、《美津保》のベビーカーで眠るなずなの中にある」──ひょんなことから授かった生後2ヶ月の「なずな」。かけがえのない人々と、二度と戻らない日々を描く長編小説』

著者略歴
『堀江/敏幸
1964年岐阜県生まれ。作家。99年『おぱらばん』で第12回三島由紀夫賞、2001年『熊の敷石』で第124回芥川龍之介賞、03年『スタンス・ドット』で第29回川端康成文学賞、04年『雪沼とその周辺』で第8回木山捷平文学賞、06年『河岸忘日抄』で第57回読売文学賞小説賞、10年『正弦曲線』で第61回読売文学賞随筆・紀行賞、12年『なずな』で第23回伊藤整文学賞、13年『振り子で言葉を探るように』で第11回毎日書評賞、同年、第66回中日文化賞を受賞』

でもこれでは表面的すぎる。
実際の文章にいいところが多い。少し紹介したい。
『なずなは飲む。飲んでくれる。心配になるくらいに飲む。どんどん飲む。うどんどんどんだ。あっというまに飲み干したと思ったら、ぺんぺん草の手足からくたんと力が抜けて、もう目がとろとろしはじめている。ミルクのぶんだけ身体が重くなり、眠くなったぶんだけどこか大気中からもらったとしか思えない不可思議な重さが、こちらの肩に、腕にのしかかる。
哺乳瓶を置いてまっすぐ縦に抱きなおし、肩よりうえに顔が出るようにして、背中をそっと叩いた。励ますように、祈るように、静かに叩き続けた。(中略)五分、十分。なにも考えず、てのひらでなずなの背中に触れる。どんな顔をしているのだろう。こちらから彼女の表情を確かめることはできない。気持ちがいいのかよくないのか。起きているのか眠っているのか。反応のなさに不安になりかけた頃、耳もとで、がっ、と小さく湿った空気の抜ける音がした。(40〜41ページ)
・・・
洗い終わったらガーゼケットで身体を包んで、いっしょに湯船につかる。なずなはまだこちらを見つめて、目をそらそうとしない。しばらくすると、丸く開いたさくらんぼのような口から、ほう、という声が漏れ出て、ユニットバスの壁に跳ね返った。ほう、と私も返事をする。もう一度。もう一度、ほう、と言ってくれないか。しかし彼女は、やわらかい肌だけでなく瞳まで湿らせて、満足そうに、ぼうんやりこちらを見あげるばかりである。(98ページ)
・・・
水筒のお湯を使ってミルクを作る。口もとに持って行くまでの時間のほうが、ミルクの吸い込まれる時間よりもながくなった気がする。真っ白な顔にどんどん赤味が差し、満足したところで、爆音とともにまた一連の儀式がはじまる。すべてすっきりさせると、私も丁寧に手と顔を洗い、無精髭を剃り、つるつるにした状態で、なずなにそっと頬ずりした。
頬を寄せるなんて、人間にとっては最高の贅沢ではないか。向き合う努力と苦しみを乗り越え、真横に密着して、おなじ方向をながめることのできるたったひとつの姿勢。(322〜323ページ)
・・・
人は、親になると同時に、「ぼく」や「わたし」より先に、子どもが「いること」を基準に世界を眺めるようになるのではないか。(256〜257ページ)
・・・
おいしい弁当を食べ、珈琲を飲み、甘いものを食べて、赤ん坊の排泄物を処理する。世のお父さんお母さんは、みなこうして、きれいきたないの区別の無意味を悟るのだろう。なずなの発した芳香は杵元の私の部屋でのように籠もることもなく自然の風に流れていく。(436ページ)』

今は時間がなくてまさに「育児戦争」ただなかの若いお母さん、お父さん。いつかこの感覚をゆっくりなつかしめるようになると思って今を頑張ってほしい。
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「新任巡査」

2016年05月20日 | 日記
古野まほろ(新潮社)

実に丁寧に新任巡査の教育が描かれていて、やはり経験者?でなければ分からないティテールがあるようだ。
何せ、653ページにもなる膨大なもの。交番勤務の細かな日常があり、それが二人の新人、ライトとアキラによってこちらも「経験」させられていく。これは面白い工夫。
後半からは「事件」が発生。想定外の展開となる。正直な話、これはないでしょう・・・と思いますよ。

内容紹介は
『あなたは交番のことを、警察官というお仕事のことを、何も知らない――。凡庸にして心優しい頼音。ある能力を備えた男勝りの希。ふたりの新任巡査の配属先は駅の東と西にある交番だった。毎秒成長し続けなければ、警察官としてやっていけない――。元キャリアの著者にしか描きえない圧倒的ディテイル。深淵を知る者だからこそつける噓。最前線をぶっちぎりでかけぬける、まったく新しい警察小説、誕生!

平凡だけど心優しい、キラキラネームの上原ライト。首席の女警でいつも能面、歩くパソコンこと内田アキラ。警察学校で大きな差のついた新任巡査ふたりは、ターミナル駅の東と西で、人生初の交番勤務を始める―朝から次の朝まで、24時間の泊まり勤務。ライトは生き残ることができるのか。アキラはやっぱり優秀なのか。ふたりを襲う、あまりにも過酷な試練と陰謀とは? 』

著者は以下。
『古野/まほろ
東京大学法学部卒。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la S´ecurit´e」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Dipl^ome de Commissaire」受領。なお学位授与機構より学士(文学)。警察庁1種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。2007年、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞し、デビュー』

二つ、言いたい。
話の展開には、前述のように「無理」がある。けど、まあ、エンターテインメントと割り切れば面白いか。
どこまで本当、事実をベースにしているのか、を考えると・・・愛予県の知事の息子なるものが登場するけど、それって知っている人は知っているの世界。つまり愛○県の文部官僚から天下った?知事の○○守行となれば、あの人。著者はこの県に出てたのかな? ところで、「警視庁キャリア」というのはあるのだろうか?
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「不屈に生きるための名作文学講義」

2016年05月18日 | 日記
大岡玲(

良い本ですねぇ。
改めて日本の文学作品を見直すきっかけになる。
夏目漱石など大文豪をあげて新たな見方を示す。昔読んだ本なのにもう一度読んでみたくなった。特に宮沢賢治なんて児童文学的だけど大人が読んでももちろん良いし、新たな発見もあるでしょうね。

内容紹介がにぎやか・・・『『芥川賞作家で、ビョーキなほど本の「偏愛者」である大岡玲が
体当たりで描く痛快! 「名作文学」の“トリセツ"全25講義!
不朽の名作文学をたどることでひとつなぎの「読書の旅」が楽しめます!
その旅で誰も「か弱き人間」の「生き延びる知恵」が見つかるはずです!
そう名作は書棚の飾り物ではなくいつの世も使える「実用書」なんですね!
どうぞ、ゆったりとしながら、名作「読書の旅」をお楽しみください!!
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《本と深い仲になるとは、本そのものを友人とする感覚である————》

古今東西の不朽の名作を「ロードムービー」のように展開する「講義」形式。なんとあの国民的な超人気マンガ『ワンピース』から始まり、スティーヴンスン『宝島』、夏目漱石『坊っちゃん』の胸がキュンとなるお話が続き、さらに「DV」漱石×「悪妻」鏡子=夫婦愛???へと……。
スタンダール『赤と黒』、ルソーに『告白』、告白と差別の重〜い島崎藤村の『破戒』!! 福沢諭吉の翻訳への苦悩、「society(ソサイエティ)」を「××交際」と訳したお話。言文一致の二葉亭四迷が習ったものは……!?そう三遊亭圓朝(えんちょう)の「落語」! 「近代の日本語の影」は圓朝!!
日本のミステリーのルーツを黒岩涙香にたどり、妖しき乱歩の作品を逍遥し、ご存知! 谷崎潤一郎と佐藤春夫の「細君譲渡事件」へと続きます。
さんま、さんま、「秋刀魚の歌」を味わい尽くしてください! ! ! ! !
さらにヘンタイ度は「大谷崎」に負けない川端康成のエピソード。果ては宮沢賢治に「宗教」を見たり……。ニーチェとシンクロしたコッローディ『ピノッキオの冒険』。神なき時代の「弱き人間」の姿をピノッキオに重ね合わせ『旧約聖書』の「ヨナ書」とともに読み解きます。
最後に「超絶」本と「深い仲」になりすぎて、「8歳の夢を手放さなかった」シュリーマンの人生を通して「本(虚構)」が現実を塗り替えるそんなリスキーかつ最強の魂の遍歴を見ていきます。 』

やはり、本は友達だよ
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