読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「坂の途中の家」

2016年12月28日 | 日記
角田光代(朝日新聞出版)

ちょっと不思議な感覚に陥りそうになる。乳幼児のいる新米母親の精神がこのように揺れるものか。
裁判員裁判で争われる法廷を舞台に、それに補充の裁判員としてかかわる設定が面白いが、主眼は被告と同化しそうになるところが書きたかったところなのだろう。

内容紹介は
『2007年『八日目の蝉』、2012年『紙の月』、
そして2016年――著者の新たな代表作が誕生する!
最愛の娘を殺した母親は、私かもしれない――。
虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていくのだった。
社会を震撼させた乳幼児虐待事件と〈家族〉であることの光と闇に迫る心理サスペンス。
感情移入度100パーセントの社会派エンターテインメント!
私は、果たして、文香を愛しているんだろうか。もちろん愛していると思っている。いなくなったらと考えただけで胸がふさがる思いがする。(略)それでも、文香を自分より大切なものと思えるだろうか。かわいい、かけがえのない子どもと思えるだろうか。(本文より)

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇にみずからを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの心と闇に迫る心理サスペンス』

著者略歴
角田/光代
1967年神奈川県生まれ。90年「幸福な遊戯」でデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年『紙の月』で柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で泉鏡花文学賞、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞を受賞

読んでいてこの『心の闇』が怖い。
子育ての大変さの一端が見える。大家族で乳幼児を育てた昔が良いのか、今の保育所の充実が良いのか、難しい問題の行きつく。読み応え十分。ちょっと怖いけど、ホント。
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「千年の黙」

2016年12月20日 | 日記
森谷明子(創元推理文庫)

「黙」は「しじま」と読みます。
副題が、「異本源氏物語」。平安時代のミステリというのだから舞台設定が面白い。
ある程度、歴史や源氏に詳しくないと書けないでしょう。最初はなかなか推理小説風ではないのですが、それでも謎解きがアクセントになって楽しく読めるのです。
三部に分かれて、その間に時代が飛んでおり、それも一興。読者の想像力をかきたてる構成でもある。

内容紹介は
『第13回鮎川哲也賞受賞作。絢爛たる王朝推理絵巻!
帝ご寵愛の猫はどこへ消えた? 出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車につないでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていた。帝を慮り左大臣藤原道長は大捜索の指令を出すが――。闇夜に襲われた中納言、消え失せた文箱の中身。縺れ合う謎に挑む紫式部を描いた第一部「上にさぶらふ御猫」。『源氏物語』が千年もの間抱え続ける謎のひとつ、幻の巻「かかやく日の宮」――この巻はなぜ消え去ったのか? 式部を通して著者が壮大な謎に挑む第二部「かかやく日の宮」。紫式部を探偵役に据え、平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた華麗な王朝推理絵巻』

源氏物語って、結構、道長やら当時の実際の人物がモデルになっていたのかな、と思わせます。
平安時代までさかのぼって興味があればお勧めです。
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「息子ってヤツは」

2016年12月20日 | 日記
室井佑月(毎日新聞出版)

小学生の中学受験奮戦記なんだけれど、この子が非常にユニーク。
お母さんである室井さんはたまにテレビのコメンテイターとして拝見するが、こんなお子さんがいたのね、ってことですね。
確かにシングルマザーだったら男の子を全寮制?の中高一貫校にでも入れなければ育てるのも大変だろうなという気になるでしょうね。特にこの息子くん、どうやったらこんなに面白く育つんだ?という子どもですから。

内容紹介は
『「あんた勉強が好きだから」という言葉を、くり返し使うのがミソである。そういう地道な努力をすること3日間。すると息子は、「さあ、勉強すっかな。オレって勉強、好きだよな」なんてことをいいながら、実際に勉強しはじめたりするから驚きだ。――母子二人三脚で挑んだ受験を描く、抱腹絶倒の奮闘記。フリーマガジン「5L」(ファイブエル)にて好評連載中のエッセイ、ゆづきいづる氏による書き下ろし3コマ漫画を加えて、待望の書籍化。小3~高1までの8年分の珍エピソードに、子育て経験者の女性たちから共感の声、続々! ! 母は、勉強嫌いな息子をいかに受験合格に導いたのか?室井流「男育成」のカギがここに! ! 「息子には、生きる意味や自分の居場所を見つけてほしい」――。そんな母の願いからはじまった、 地方の中高一貫校をめざす、母子二人三脚による「受験」という闘い。入塾テストから始まり、受験を前にした小学校生活、震災を境に変化した「勉強」の意義......。息子を育てる悩める日々、そして子育てをしているから見えてくる「何かがおかしい」日本社会の姿を、室井節で痛快に斬りつつも、母としての柔らかな感性で綴る。すべての母親の心を揺さぶる、笑いと愛に満ちた、8年ぶりの新刊!』

ホント可笑しいのですよ。
子育て中のみなさん、参考になりますよ。
読み物としても面白い。
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「ネットと愛国」

2016年12月10日 | 日記
安田浩一(講談社)

一時、世間で騒がれていたが見たこともなく、そのうち「ヘイト・スピーチ」で問題となり、法律まで作って禁止、なんだか下火になっている。それにしても、このような現象が出てきた背景が、一種の社会的貧困階層の出現など日本国内の状況の変化とネットで発信する世界が出現したことと関係がありそうだ。
読んで分かったことも少なくない。一種の「認められたい」病の人たちの意見表明なのだけろうけれど、底流には第一次大戦後のドイツでナチスが台頭し、国民が支持していったのとあまり変わらない状況が生じてきているのだろうか。

内容紹介は
『日本を覆う右傾化の正体
現代日本が生んだ反知性的なレイシスト集団の実態に迫る。彼らを育てたのは誰か――。
「弱者のフリした在日朝鮮人が特権を享受し、日本人を苦しめている」。そんな主張をふりかざし、集団街宣やインターネットを駆使して在日コリアンへの誹謗中傷を繰り返す“自称”市民保守団体。現代日本が抱える新たなタブー集団に体当たりで切り込んだ鮮烈なノンフィクション。「ヘイトスピーチ」なる言葉を世に広め、問題を可視化させた、時代を映し、時代を変えた1冊。解説:鴻上尚史(作家・演出家)』
・・・・・・在特会とは何者かと聞かれることが多い。そのたびに私は、こう答える。
あなたの隣人ですよ――。
人の良いオッチャンや、優しそうなオバハンや、礼儀正しい若者の心のなかに潜む小さな憎悪が、在特会をつくりあげ、そして育てている。街頭で叫んでいる連中は、その上澄みにすぎない。彼ら彼女らの足元には複雑に絡み合う憎悪の地下茎が広がっているのだ・・・・・・(エピローグより) 』

著者について
安田浩一
やすだ・こういち―1964年静岡県生まれ。「週刊宝石」「サンデー毎日」記者を経て2001年よりフリーに。事件、労働問題などを中心に取材・執筆活動を続ける。2012年『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)で第34回講談社ノンフィクション賞受賞。2015年には「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2][講談社]掲載)で第46回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)を受賞した。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社)、『ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力』(文藝春秋)、『ネット私刑』(扶桑社)ほか

空恐ろしくなる今後の日本。既成の左翼はもう特権階級化しているし(日教組の委員長が銀座で豪遊して週刊誌にバレて、結局辞任した)右翼もやくざがらみで境界線が不明になり、ネットから出てきた不満を抱く「国民」がこの在特会の底辺にある。社会現象としても不気味だが、それこそ、我々の心の底にある差別意識に根差すものかもしれない。
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「機長 究極の決断」

2016年12月10日 | 日記
C・サイレンバーガー(青山社)

実際にあったハドソン川に不時着した飛行機の事故のお話。
当時は本当に奇跡的な救出劇で世界中が感動しましたね。たまたま何かで紹介されていて読んでみた。
お話が機長の生い立ちや事故がらみの教訓や訓練など色々多岐にわたっているのだが、この事故のドキュメンタリー?と行ったり来たりするのでちょっとわかりにくい構造になっている。事故の話だけでは物語的には長さが足りないのだろう。その点がもどかしい。

内容紹介は
『Japanese edition of Highest Duty: My Search for What Really Matters. Story about the successful emergency landing of an airliner in the Hudson River, but it goes much farther then the incident and the pilot. Anyone who ever flies commercial airlines should read this book, as well as anyone interested in this compelling American story. In Japanese. Distributed by Tsai Fong Books, Inc.

二〇〇九年一月一五日、ニューヨークのラガーディア空港を離陸して上昇中にカナダガンの群れに衝突、両エンジンが破壊されマンハッタン島西側のハドソン川に緊急着水したUSエア1549便の航空事故は、乗員乗客全員が助かったことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれた。エンジン停止から不時着までわずか三分二八秒、機長はこの絶体絶命の危機でどう決断したのか?一人の機長の使命感、人生観、そして完璧な仕事を語る一冊』

著者略歴
サレンバーガー,チェスリー
1951年、テキサス州生まれ。空軍士官学校を経て戦闘機パイロットとなり、内外の米空軍基地で軍務に従事。1980年退役し、エアラインパイロットに。重大事故の調査に携わり、米国定期航空操縦士協会(ALPA)の安全関係各種委員などを歴任。バードストライクでエンジンすべての推力を失いニューヨークのハドソン川に緊急着水したUSエアの機長。総飛行時間二万七〇〇〇時間。産業心理学修士、行政学修士の学位も持つ
訳者も面白い、専門家なんですね。
十亀/洋
1947年、愛媛県に生まれる。東京大学工学部航空学科卒業。全日本空輸の整備・運航・安全部門を経て、(財)航空輸送技術研究センター主任研究員

映画にもなってましたね。
機長の仕事が分かって興味深かった。おまけにアメリカの機長は副業もやっているし、待遇はかつてほどではなかったり、カリフォルニアに住んでいて、会社の本拠地まで飛行機で出勤するなんて、さすが全米企業はこんなこともあるのかとびっくりした。
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