読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「最高機密エージェント」

2016年10月26日 | 日記
デイヴィッド・A・ホフマン(原書房)

原題は「THE BILLION DOLLAR SPY」
CIAの実録。モスクワに存在したレーダーや戦闘機の最高機密を盗んだ技師のトルカチョフの話だ。
これが小説のように面白い。諜報合戦の様子やいかに相手を出し抜くか、まさにスパイのやり方が詳述されていて手に汗を握る展開だ。
ひとつだけ、手口を明かしてないのは、当時のソビエトから脱出させたシェイモフの件だ。今でも秘密の方法があるのだろうか。実際生身の人間を家族ごと脱出させるのは相当難しそうだ。

内容紹介は(五味 洋治氏 ごみ ようじ/1958年長野県生まれ。東京新聞編集委員のネット上のブログからの引用)
『 一九七七年冬、モスクワ市内の市場に止まった車に、五十代のロシア人男性がひそかに近づいた。車のナンバーには、米国大使館車両を示す「D-04」があった。男性は、運転していた大使館員に手紙を渡し、姿を消す。中には、ソ連軍用機の機密情報と、「さらに協力できる」との伝言がさりげなく書かれていた。米ソが厳しく対立していた冷戦時代のこと。CIAは、KGBの罠ではないかと警戒したが、情報の価値を無視できず、男性との接触に乗り出す。
 男性はトルカチェフというレーダーエンジニア。その後六年間に二十一回CIAの担当者と会い、数千ページの軍事機密を提供し続けた。後に「ビリオンダラー(十億ドル)スパイ」と呼ばれることになる、この本の主人公である。トルカチェフは、勤務していた研究所から資料を借り出して、自宅やトイレに持ち込み、CIAが開発した特殊な小型カメラなどを使って大量に複写した。そこにはソ連が開発中だった戦闘機、迎撃機のレーダーなどの能力や開発計画に関する論文があった。なんと十億ドル以上の価値に相当し、その後の米国の軍事的優位を決定づける。CIAの担当者は、KGBの尾行をかわすため、変装し、公共交通機関を乗り継いでトルカチェフと会う。金銭報酬だけではなく朝鮮人参や胃薬も渡し、彼の健康に気を配った。彼の息子が欲しがる西洋の音楽や、文房具も準備していた。
 これは映画でも小説でもない。全てが事実だというから驚く。ワシントン・ポストの敏腕記者が、CIAが機密解除した千ページ近い記録と関係者の証言から、当時の接触を緻密に再現した。スパイ映画も描けなかったスリリングな諜報戦の現実といえる。
 トルカチェフの動機は、「内部から腐っている体制に打撃を与える」ことだった。行動は次第に大胆になり、CIAの忠告も聞かない。監視が強められ、意外な結末を迎えるが、詳しくは書かないでおこう。私は北京勤務時代、中国の公安機関に尾行され、取り調べを受けたことがある。国家情報機関の動きも多少知っているつもりだ。精度の高い偵察衛星が上空から見張り、携帯電話の盗聴や、メールの盗み読みも日常的に行われている。
 しかし、本当の機密情報は、相手と信頼関係を築いて入手するしかない。本書には、まだハイテクが発達していなかった冷戦時代、CIAが試行錯誤の末に築いた情報収集のノウハウが詰まっている。この分野に関心のある人には、ぜひ勧めたい一冊だ』

・・・実に面白かった。的確な内容紹介の五味さんに、ここで感謝します(東京新聞の書評かな)。
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「校閲ガール」

2016年10月25日 | 日記
宮木あや子(KADOKAWAメディアファクトリー)

痛快、お仕事小説。
いまどきの女子社員の様子が、ホントかどうかは別にして、よく描かれて面白かった。
新幹線の中京地区までの往復で読み切ったのです。テレビドラマになったのもよくわかる。テンポが良いし、女子社員の読者に共感できるところがあるし、若い社員のストレス解消にも役立つ。
ちょっと女子の言葉使いが?であるがそれも今では普通なんでしょうか。
出版社の内部の生態もかいま見えるし、高学歴女子の変身も面白かった。

内容紹介は
『ファッション誌の編集者になる! という夢を抱えて出版社に就職した河野悦子(こうの・えつこ)が配属されたのは校閲部だった! 担当する原稿や周囲ではたびたび、ちょっとした事件が巻き起こり……! ? 読んでスッキリ、元気になる! 最強のワーキングガールズエンタメ☆
根性と気合と雑誌への愛で、 激戦の出版社の入社試験を突破し 総合出版社・景凡社に就職した河野悦子(こうの・えつこ)。だから「こう・えつ」なんですよ。

著者紹介
『宮木/あや子
1976年、神奈川県生まれ。
2006年、『花宵道中』(新潮社)で、第5回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞と読者賞をW受賞しデビュー。 著書に、『雨の塔』(集英社)、 『群青』(小学館・長澤まさみ主演により映画化)、『セレモニー黒真珠』(メディアファクトリー)、『野良女』(光文社)、『憧憬☆カトマンズ』(日本経済新聞出版社)、『学園大奥』(実業之日本社)、『官能と少女』(早川書房)、『婚外恋愛に似たもの』(光文社)など。 震災への支援を目的とした女性作家たちの同人誌『文芸あねもね』にも参加。 繊細で叙情性あふれる作風と、女性たちの本音をあけすけに吐露しつつも明るく突き抜けた作風の両方を巧みに駆使し、女心やそれをとりまく環境を鮮烈に描き出す注目作家。 2013年、『セレモニー黒真珠』で第9回酒飲み書店員大賞を受賞』

続編もあるようです。気分転換に良い。

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「活版印刷三日月堂」

2016年10月20日 | 日記
ほしおさなえ(ポプラ文庫)

副題は「星たちの栞」。表紙の絵がメルヘンチックだが内容に合ってますね。
ホンワカ暖かな気持ちのなれる。舞台は川越。何度か自転車で行ったので情景が浮かんできて良いですね。4章に分かれているけどそれぞれの事情を抱えた登場人物の解決がこの印刷で可能になっている。
こんなつながりのお話。今、活版印刷ってほとんど見かけないけど、商売として成り立っているのかな。一度名刺など作ってみたい。

内容紹介は
『「伝えられていない〝言葉〟はありませんか――」
発売前から社内外で感涙・絶賛の声、続出!!
優しさと切なさと感動の詰まった、今年一番の自信作!

川越の街の片隅に佇む印刷所・三日月堂。店主が亡くなり、長らく空き家になっていた三日月堂だが、店主の孫娘・弓子が川越に帰ってきたことで営業を再開する。三日月堂が営むのは昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂には色んな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心が解きほぐされていくのだが、弓子もどうやら事情を抱えているようで――』

著者プロフィールは、『ほしおさなえ 1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年『影をめくるとき』が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』にて、第12回鮎川哲也賞最終候補。 著作に『空き家課まぼろし譚』『みずうみの歌』などのほか、「ものだま探偵団」シリーズなど、児童書も手がけている』

漢字の横にふってある「ルビ」がもともと印刷界の容疑の「ルビー」だったなんてみなさん知っていましたか。面白い知識もあります。お勧めです。

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「誤植読本」

2016年10月17日 | 日記
高橋輝次・編著(ちくま文庫)

以前に教科書として本を作ったことがある。何回か校正したが、それでも後から誤植が出て往生した。
本書を読んで、「校正、恐るべし」がたくさん出てきて、面白かったし、何度校正しても誤植が発生することが分かって、かえって達観できましたね。

さて、内容紹介は
『本と誤植は切っても切れない!? 恥ずかしい打ち明け話や、校正をめぐるあれこれなど、作家たちが本音を語り出す。作品42編収録』

ついでに
著者紹介
高橋/輝次
1946年伊勢市生まれ、神戸育ち。大阪外国語大学卒。創元社を経て、フリー編集者になる。

本書の文庫の表紙が本の絵になっていて、即物的ではあるが一目で内容が分かって、本好きには楽しめる。
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「飛行士たちの話」

2016年10月17日 | 日記
ロアルド・ダール(早川書房)

ダールの最初の短編集だそうだ。
戦争当時の話で多分多くが実話に基づいているのだろう。リアリティがあってしかも中にはちょっと幻想的なストーリーもあり面白く読めた。

内容紹介は
『一九三九年イギリスは開戦し、パイロットを志願したその若者は、訓練中アフリカの高原に不時着した。彼はそこに住む老人から長く不思議な身上話をきくことになったが……上記の悪夢のような物語「アフリカ物語」を始め、エピソード風に綴る10の飛行機乗りの話。狂気と恐怖に彩られた処女短篇集』

たまたま誤植の本を読んでいたので(次の紹介の本)、目についたのは、最後の解説のところに「す」は「し」(逆かな?手元にないのではっきりしないけど。269ページあたり)の間違いね。
ダールファンなら大いに楽しめる。
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