読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「シークレット・ウオーズ 上」

2020年02月29日 | 日記
 スティーヴ・コール(白水社)
 
 もう、何と言っても長大なんです。上下と2巻です。誰がこんなのを読むのか・・・しかし、図書館で借りてみたのだが、手に負えない。
 問題は、とことんなんでも網羅的に書いているのと、翻訳が逐語訳的で読みにくいこと・・・涙
 という訳で、挫折です。

 内容紹介は(出版社によるもの)
『終わらぬ混迷の「黒幕」は?
ピュリツァー賞作家が描く三つ巴の攻防
9.11から米軍主導の掃討作戦が終結した2014年まで、アフガン、パキスタン、アメリカの三つ巴の攻防を詳細に描いた大作。

「アフガン問題」の核心に迫る
アフガニスタンの混迷はなぜ終わらないのか――。9.11テロ事件から20年近い歳月が過ぎた今も、アフガニスタンは安定とはほど遠い状況にある。
本書は、長年にわたる綿密な取材と膨大な資料調査に基づいて、アメリカ、パキスタン、アフガニスタンを中心に関連諸国の外交・軍事・諜報活動や、アル・カーイダ、タリバーンの動向を詳細に描き、「アフガン問題」の核心に迫った大作である。なかでも注目されるのは、「最大の黒幕」と言われるパキスタンのスパイ機関、三軍統合情報局(ISI)とCIAの動きを執拗に追っている点だ。
9.11以降、アフガン空爆、ビン・ラディン殺害、無人機による攻撃の激化、タリバーンとアル・カーイダの復活、駐留米軍の大幅削減といった重要な出来事が相次いだ2014年までのアメリカの関与、暗躍するISIの実態、反体制武装勢力の動向を、他を圧倒する筆力と情報量で描いた骨太のノンフィクションである。ピュリツァー賞を受賞した前作『アフガン諜報戦争』(小社刊)に続く、調査報道の白眉。全米批評家協会賞受賞!

[目次]
地図一覧/主要登場人物/主要略語一覧/はじめに

第1部 手探りの開戦
 第1章 「ハーリドに事情ができた」
 第2章 審判の日
 第3章 かくのごとき友人たち
 第4章 リスクマネジメント
 第5章 破滅的な成功

第2部 遠のく平和
 第6章 ささやかな変化
 第7章 タリバーンのカルザイ支持
 第8章 謎
 第9章 「あの人のやり方は自分たちとは違っていた」
 第10章 ミスター・ビッグ
 第11章 大使対決
 第12章 海の中に穴を掘る
 第13章 過激派

第3部 誠意
 第14章 自爆の謎を解明せよ
 第15章 プラン・アフガニスタン
 第16章 暗殺と闇の国家
 第17章 ハードデータ
 第18章 愛の鞭
 第19章 テロと闇の国家

[原題]Directorate S

[著者略歴]
スティーブ・コール(Steve Coll)
コロンビア大学ジャーナリズム大学院長、『ニューヨーカー』誌スタッフライター。1958年、ワシントンDC生まれ。『ワシントン・ポスト』南アジア支局長(1989~92年)、同紙編集局長(1998~2004年)を歴任。1990年に米証券取引委員会に関する報道でピュリツァー賞を、2005年に『アフガン諜報戦争(Ghost Wars)』でふたたび同賞を受賞したほか、2019年には本書で全米批評家協会賞を受賞。2007~13年、シンクタンク「ニューアメリカ財団」の会長を務めた。 主な著書に、The Deal of the Century(1986)、The Taking of Getty Oil(1987)、 Eagle on the Street(共著、1991)、On the Grand Trunk Road(1994)、The Bin Ladens(2008)が、邦訳書に『アフガン諜報戦争(上下)』(白水社)、『石油の帝国』(ダイヤモンド社)がある。

[訳者略歴]
笠井亮平(かさい・りょうへい)
1976年愛知県生まれ。岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員。中央大学総合政策学部卒業後、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科で修士号取得。在中国、在インド、在パキスタンの日本大使館で外務省専門調査員として勤務。横浜市立大学、駒澤大学などで非常勤講師を務める。著書に『モディが変えるインド』『インド独立の志士「朝子」』(以上、白水社)、共著に『軍事大国化するインド』(亜紀書房)、『台頭するインド・中国』(千倉書房)、訳書に『ネオ・チャイナ』(白水社)などがある。 』

・・・ともかく、ごめんなさいね。読めませんでした。気力と体力のある方だけにおすすめ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「『人生百年』という不幸」

2020年02月28日 | 日記
 里見 清一(新潮新書)

 週刊新潮に連載していただけあって結構毒舌風味のエッセイです。
 内容紹介は
『「ピンピンコロリ」は理想なんかじゃない。
「死にゆく患者」を常に診続けてきた 臨床医によ現代医療論。

人は必ず老いて、寿命が尽きて死ぬ。医者も患者も家族も、国家も、この当然の真理を直視できずに目を背ける。「人生百年時代」などと浮かれているが、この長寿社会は人々に幸福をもたらしているのか。長生きのみを目的にする医療にはいかなる歪みが生じるか。がん患者にとって本当のハッピーエンドとは何か。臨床医として常に「死にゆく患者」と共にいる著者が、遠慮忖度なく現代医療の抱える根本的な矛盾を衝く。

【目次】
まえがき
I 最期の選択
1 癌患者のハッピーエンドとは何か/2 人工呼吸器につなげるのか/3 ピンピンコロリは実に難しい/4 内なる無法者としての癌/5 「人は死なない」を前提にしてしまった現代医療/6 ホスピスにて/7 何も考えなければ何も始まらない/8 事前の意志はコロコロ変わる/9 死を望む患者との対話/10 「生きねばならない」という偏見(バイアス)

II 患者の事情
11 画面を見ずに患者を見よ/12 癌の心配しながら煙草を吸っても/13 素人感覚のままでいると迷惑だろう/14 最期に何をしたいですか/15 代替医療で得られるものは/16 贈り物はありがたく受け取るべし/17 それでも贈り物は断るな/18 「神の手」幻想が消えない理由/19 敵は病気かそれとも……/20 看護大学を卒業する諸君へ/21 日本人は主治医を求める/22 財前五郎は「主治医」だったのか/23 何をそんなに怖がるの/24 「私が病気をこじらせたのですね」

III 命とカネ
25 厚労省が口にしないこと/26 救命艇に乗るべきは誰なのか/27 邪悪なものは強い/28 医者の無駄遣いは止まらない/29 何のために長生きするのだろう/30 他人の金なら気前良く/31 気前のいい人は怪しい

IV 医者の事情
32 新人医師の採用基準は/33 引継症候群/34 医者の必修科目は何か/35 信頼と理屈/36 順天堂不正入試の科学的考察/37 どこまで「配慮」すればいいのだ/38 当たり前が当たり前でなくなると/39 救急隊の苦労を思う/40 人が死ぬのはそんなに嫌か

里見清一
本名・國頭英夫。1961(昭和36)年鳥取県生まれ。86年東京大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院内科などを経て日本赤十字社医療センター化学療法科部長。杏林大学客員教授。著書に『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』『医学の勝利が国家を滅ぼす』『医師の一分』など。      』

・・・大いに賛成の話が多い。痛快です。おすすめ。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「スナック墓場」

2020年02月26日 | 日記
 嶋津 輝(文芸春秋)

 短編集で、通じてるのは「女性の話」というとこか?
 どうということのない日常を切り取っており、読後感もどうってことない。

 内容紹介は
『単行本刊行前から注目の「オール讀物」新人賞作家が、2人同時デビュー!

〝どっかりしていて、愛嬌がある小説〟
森絵都(第96回 オール讀物新人賞選考委員「姉といもうと」選評)
〈生きる姿勢が美しい人〉は、ときに可笑しくて、でもじんわりと沁みる。
つぶれたスナックの女性店員たちが開いた競馬場で同窓会、職人気質のクリーニング店主と下着を持ち込んできた若い女性客、幸田文の『流れる』に憧れる家政婦の姉と、指がないが、活動的なラブホテルの受付の妹……。
乾いていて衒いがないのに、そこはかとなく〈艶〉のある、クセになる文章のリズム。読んでいて、おもわずほほえんでしまう巧まざる〈ユーモア〉、人間観察からあふれでる、生きることへの〈姿勢の良さ〉。身近にありそうな、でもちょっとだけいつもと違う世界を、〈女性たちの持つ違和感〉を織り交ぜつつ、町の商店街の生活、女性同士の友情と葛藤、男性への鋭い視線などを通して描く実力派新人が登場。
ささやかだけど美しくて、すこしおかしな日常、全7篇の短篇集。

〈収録作〉
「ラインのふたり」(アンソロジー『女ともだち』(文春文庫)収録)
「カシさん」(第一回林芙美子文学賞最終候補作)
「姉といもうと」常(第96回オール讀物新人賞受賞作)
「駐車場の猫」
「米屋の母娘」
「一等賞」(『短篇ベストコレクション 現代の小説2019』(徳間文庫)収録)
「スナック墓場」

嶋津/輝
1969年東京都生まれ。2015年「カシさん」が、第一回林芙美子文学賞の最終候補に残る。16年、「姉といもうと」が第九十六回オール讀物新人賞を受賞  』

・・・ぼーっと読むには良いかな?
・・・評価がきちんとできない私は未熟なのか?
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「潜入中国」

2020年02月20日 | 日記
 峯村健司 (朝日新聞社)

 著者は朝日の記者でしょう?
 よく、共産主義?中国の内情を書けますね。 ちょっと前までは、社会主義や共産主義は賛美の対象ではなかったのか?
 「反権力」が正義の新聞なのに・・・日本政府のやることなすことに反対し、政府に反対できるなら、中国や韓国に反対意見を言わせてそれを記事にして、またあおる、みたいな態度は、変わったのか?
 それにしても、本書にみえる中国ってどうして大国になろうとするのか。
 面白かったのは、アメリカの軍人の見方。つまり空母建設で金を使うという軍拡競争で経済が疲弊して国民の不満から政権が倒れる、ソビエトの場合と同じように・・・というのが穿った見方と思ったが、現実はそうならないかも知れないと著者の分析。こりゃ困った話だね。

 内容紹介は
『超大国アメリカを猛追し、国際秩序を塗り替えようとする中国。
その足元では何が起きていたのか?
もう二度と入れないかもしれない「核心の地」から朝日新聞の特派員が
“体を張った”渾身のルポ。

●国産初の空母建造の地「空母島」、新型ステルス機飛行実験、
世界を脅かすサイバー攻撃の拠点、宇宙開発、女性スパイによる
「ハニートラップ」の最前線、禁断の北朝鮮国境での密輸現場、
中国商人の情報網……。

●2007年以降、31の省、自治区、直轄市のほぼ全てに足を運び、
二十数回にわたる中国当局の拘束、長時間にわたる尋問を受けながらも
数々の厳戒現場に潜入した特派員が
監視の目をかいくぐって見た軍や党の実態とは何か?


《目次》
【序 章】異形の超大国は何を目指しているのか――現場から見た急速な近代化の足元
・警察車両に取り囲まれて
・リスクをとって現場を目指す
・国際秩序を塗り替える

【第1章】中国軍の強さともろさ――新型ステルス戦闘機の実力
第1節 9時間にわたる拘束と尋問
・実態は「張り子の虎」
・「深刻なトラブルが見つかった」
・国産化というアキレス腱
・米政府の「スパイ」と決めつけられて
・トップも知らない試験飛行
第2節 全軍を巻き込んだ大疑獄
・3000億円を超える賄賂
・汚職摘発に必死な理由

【第2章】サイバー空間を占拠せよ――戦力と戦略の実態
・報告書が明かした実態
・サイバー部隊が参加した軍事演習
・「見えない戦争」は始まっていた
・厳戒の職業訓練校
・「ギネス認定」された施設
・中国で最も強力な組織の一つ
・「ネット民兵」、日本も攻撃
・日本政府のサイトに侵入
・サイバー空間は安全保障の砦
・「中国=ハッカー攻撃国」の疑念
・増え続ける日米へのサイバー攻撃
・「外務大臣のレクチャーメモ」の罠
・「なりすましメール」のからくり

【第3章】宇宙開発への野望
・警戒心を高めた衛星の破壊実験
・核兵器に代わる次世代兵器
・「ウェーブライダー」の兵器化
・最先端の武器開発
・独自の宇宙ステーション開発
・月と火星への進出

【第4章】世界最大規模のスパイ活動
・うごめく諜報員
・弱みを握って脅す「ハニートラップ」
・「かぐや姫」に溺れた海自1等海曹
・芸能界にもスパイの手
・拒んだ女優、姿消す

【第5章】中国、海軍大国への胎動――ルポ「空母建造」の現場潜入
・3隻の空母建造へ
第1節 2009年9月、「空母島」へ
・「無事に戻ってこられるだろうか」
・「おまえ、どこのスパイだ。身分証を見せろ」
・小島にもたらされた「空母特需」
・国民にも高まる「空母熱」
第2節 無人偵察機、艦載機の実態
・中国軍が最重視する兵器
・海自の探知能力警戒
・ベールに包まれた国防予算
・「国力に合う軍」志向
・「政権は銃口から生まれる」

【第6章】国境から見た北朝鮮――「血の同盟」の実態 
第1節 とうとう一線を越えてしまった
・世界唯一、機内撮影禁止
・「軍人だけは写さないでください」
・元帥様がくれたサンプル
・制裁を受けても進む経済復興
第2節 「金正日訪中」の情報を誰から得たのか
・警察に移送、問い詰められた内部情報
・6時間の拘束の末に
・労働教化刑12年を受けた米国人
第3節 鉄条網越しの「人間サファリツアー」
・密輸と運び屋
・中国商人による「スパイネットワーク」
・圧力をかけても動かせない
・中国共産党の分析結果
・ファインダー越しに兵士と目が合った
・鉄条網越しに渡したタバコ
第4節 北朝鮮に関する中国の極秘文書
・「将軍様が亡くなった」
・通称「301病院」からの情報
・軍事闘争の準備
・動かなかった中国軍
・北朝鮮の核拡散を防止する
・父から受け継いだ「マニュアル」

【第7章】組織でみる中国軍の実像
第1節 党指導部が立ち上げた新組織
・緊急発進が増えた理由
・米機にも急接近
第2節 軍トップの政策と思想
・一時は臨戦態勢指示
・政策・思想、軍から影響
・緊迫! 潜水艦の巨大基地
・軍事解決を世論支持
第3節 軍人意識と管理体制
・銃盗み脱走、強盗計画
・一人っ子世代の相次ぐ除隊
・規律強化、高級店ひっそり
・「天安門事件以来の襲撃事件」
・続く軍人の暴力
・矛盾抱えて膨張

【終 章】最後の中国特派員になるかもしれない――縦横無尽に取材のできた時代
・空港で指紋と顔画像を採取
・「ハイテク文革」
・ スパイ罪の最高刑は死刑
・縦横無尽に取材できた最後の特派員
・中国取材のヒント

著者について
峯村健司 (みねむら・けんじ)
朝日新聞国際報道部記者。1997年入社。中国総局員(北京勤務)、 ハーバード大学フェアバンクセンター中国研究所客員研究員などを 経て、アメリカ総局員(ワシントン勤務)。優れた報道で国際理解 に貢献したジャーナリストに贈られるボーン・上田記念国際記者賞 受賞(2010年度)。著書に『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人 類最大の権力闘争』(改題した文庫『宿命 習近平闘争秘史』)など。    』

・・・これだけ目次の詳細を教えられると読まなくても良いかもねと思うけど、やっぱり読んだ方が面白いですよ。
・・・中国の怖さと弱さの現状がよく分かる。でもすぐにその弱さを克服してきそうなところがやっぱり恐怖感を醸すなぁ。関心のある方におすすめです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「罪の轍」

2020年02月17日 | 日記
 奥田英朗(新潮社)
 
 前回のオリンピックは昭和39年。当時はまだ高校生だったが、この時代の空気は非常に良く感じる作品だ。
 主人公の宇野と刑事の落合が交互に出てくるのだが、違和感なくスムーズにストーリーが流れる。どうしてか分からないけど、時間の流れとそれぞれの感情の流れも良く読めていく。
 作者の『オリンピックの身代金』も傑作と思ったが、これもなかなかのもの。方言が効果的で登場人物の性格や個性と重なって人間味を出す。事件の展開のヒントにもなっていると書くのは、ネタバレかな。でも、まあお許しください。 

 内容紹介は
『昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティーで描く傑作ミステリ。

著者略歴
奥田/英朗
1959(昭和34)年、岐阜県生れ。プランナー、コピーライター、構成作家などを経験したのちに、1997(平成9)年『ウランバーナの森』で作家としてデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞を、2004年『空中ブランコ』で直木賞を受賞する。2007年『家日和』で柴田錬三郎賞を、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞した  』

 以下、インタビュー記事があったので引用します。
『1963年、4歳児が誘拐、殺害され、日本中の注目を集めた吉展(よしのぶ)ちゃん事件が起きた。東京五輪前年のこの事件をモデルに犯罪ミステリー『罪の轍(わだち)』(新潮社)を書いた奥田英朗さんは「いまある世の中の基礎になった事件だった」と話す。
 
 北海道・礼文島で昆布漁の親方の下で働く宇野寛治は空き巣の常習だった。地元にいられなくなり、本土に流れ着くと、同じ手口で犯罪を繰り返し、子どもを手にかける残虐な犯行へと至る。社会全体が五輪に沸くなか、「莫迦(ばか)」とさげすまれ、行き当たりばったりの行動を繰り返す宇野は、時に哀(かな)しく映る。物語で人を裁くことは決してしないのが奥田さんのモットーだ。「誰でも事情があるし、こいつなら何を言うかと想像しながら書く。勧善懲悪みたいな物語は僕には書けない」
 事件が複雑化し、世間の耳目を集めたのは、電話機や自動車などを使った新しい時代の捜査に不慣れだった警視庁が不手際を重ね、情報公開に踏み切ったからだ。テレビで全国に放送され、匿名の電話通報が相次いだ。「日本人が最初に経験した劇場型犯罪。マスコミが大騒ぎして犯人捜しをしたり、いろんなやじ馬が名乗りを上げたり。いまのワイドショーがやっているようなことが始まった事件だった」。足で稼いできた刑事たちが大量の情報提供に振り回され、被害者宅への誹謗(ひぼう)中傷が続く描写に、現在の社会の原型が見え隠れする。
 「電話が普及して匿名でものを言うことを覚えたことから始まり、もっと膨張して、みんながインターネットで発信し、炎上する時代になった。昔は、誰からも意見を求められなかった人たちが意見を言っている。民主的だけれども、攻撃の加減がわからないから、徹底して追い詰める」
組織内の足の引っ張り合いに苦しめられながらも事件解決に奮闘するのは、2008年に発表した『オリンピックの身代金』に登場した刑事たちのチームだ。
 
 なぜ、東京五輪前後の時代を描くのか。
 1959年生まれで、繁華街にいくと傷痍(しょうい)軍人がいた。終戦直後の名残がいっぱいあって、それが好きだったという。「かなりむちゃもしただろうし、労働状況も悪く、男女平等でもなかった。ただ、みんな豊かになろうっていう目標を持って頑張っていた。オリンピックは、戦後日本がもっとも自信をつけたイベント。ああいう熱気は二度とない。もっとも熱かった時代だから興味があるんじゃないですかね」
 
 一方、来年に控える2度目の東京五輪には「完全な商業主義だし、国民の夢を託すものでもない」と手厳しい。
 「小説に書くとしたら?」とおそるおそる聞いてみると、「大きな物語として書く気はない。それに関わっている人の日常を連作にするぐらいしかアイデアはないかなあ」。(興野優平)=朝日新聞2019年9月25日掲載       』
・・・最後の東京五輪の話は、インタビュアーが余分な口出しじゃあないか?
・・・行ったことはないが、礼文島はじめニシン漁がだめになっていった北海道の経済的な貧しさ、日本全国もそんなに豊かではなかった時代の空気をおもいだしてしまう。
・・・最後が「哀しい」余韻だ。どさんこの方々に一読をお勧めしたい。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする