読書感想とロードバイク日記2

週末のお天気の日にロードで走っています。晴耕雨読ならぬ、晴れたらバイク、雨の日は読書の日々

「あなたの自伝、お書きします」

2016年08月30日 | 日記
ミュリエル・スパーク(河出書房新社)

 イギリス的な濃密な書き方?でしょうか、小説らしい小説。いろいろ含意も考えられるけど、ストレートに楽しむこともいい。ミステリ的な仕掛けで読者を引っ張っていく筆力がすごい。
 作者の体験がベースのようだがそれこそこの話の中で語られるように、経験を元に作者の創造が行われてそれが小説の形をとっているのだろう。まあ、お話を作る才能、言い換えれば「ウソつき」なんでしょう。
 イギリス人というかスコットランド出身ですが、一緒には暮らしにくい?かも。最後はイタリアで亡くなっているのであちらで暮らしたのかな。

 内容紹介は
『作家の卵フラーは、自伝協会なる組織に雇われ、名士ぞろいの会員の自伝執筆を手伝うことになった。やがて奇妙なことに、会員たちはフラーが書いた小説の登場人物と同じ台詞を口にしだし、小説そっくりの事件が!一方、フラーは念願の小説出版の話を反故にされ、唯一の原稿も盗まれてしまう。自伝協会と出版撤回には何か関連が?フラーは原稿を無事取り返し、出版することができるのか?スパークの幻の傑作、ついに登場!』

著者について
スパーク,ミュリエル
1918~2006。イギリスを代表する詩人、作家。1918年スコットランドのエディンバラで生まれた。小説のほかに児童書、ラジオドラマ、戯曲、メアリー・シェリーやエミリー・ブロンテの評伝も書いた。短篇デビュー作「熾天使とザンベジ河」でオブザーヴァー紙短篇賞を受賞して注目され、英国文学賞、T・S・エリオット賞をはじめ、エドマンド・キャンピオン賞、スコットランドの年間ベストブックに与えられるサルタイア賞、ボッカチオ国際文学賞、ゴールデン・ペン功労賞など受賞多数
訳者
木村/政則
1968年生まれ。英米文学翻訳家

・・・この手の小説は読者を選ぶかもしれない。心して取りかかられるとよろしいかも。個人的にはこのタイトルは内容の面白さや軽妙なニュアンスを醸し出して良いとは思うけど、原題とは思いっ気入り違うので原書を探すときなど困るでしょうね。原題の意味を出すのは難しいのでしょう。「悪意をもって徘徊する」みたいな意味だそうです。訳者の解説が良いです。



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「風が強く吹いている」

2016年08月26日 | 日記
三浦しをん(新潮社)

 箱根駅伝の話だが、青春物語でもあり、感動のスポーツだし、これを書く才能って素晴らしい。
 いろいろな登場人物の個性があってみんなで箱根を目ざすという目標に向かう姿は美しいだろうな。モデルで取材した大学の2校と言うのが良い。解説にあったが、それを選んだ理由が毎回優勝するような学校ではなくアットホームな小さな陸上部だったというのがいい。最相葉月が解説を書いていてこれも読ませる。
 内容紹介は
『2001年の正月、酩酊しつつテレビを見ていた三浦しをんの脳内に天啓のような閃きが駆け抜けた。「箱根駅伝いいっす。これは小説になる!」以来、駅伝経験者を訪ね、H大とD大に取材を申し込み、早朝の練習や高原の夏合宿に随行、記録会や予選会を見学、そして、もちろん正月は「箱根」へ、と徹底取材を敢行。構想・執筆6年、ここに本邦初の王道「青春小説」が誕生した。箱根駅伝をめざす若者たちを通して、自分と向き合い、ひとり孤独に戦いながらも、確実に誰かとつながってゆく——生きるための真の「強さ」を高らかに謳いあげた青春小説!
 カバー装画、挿画は気鋭の日本画家、山口晃氏が担当。

○ストーリー
寛政大学4年の清瀬灰二は肌寒い三月、類まれな「走り」で夜道を駆け抜けていく蔵原走に出くわし、下宿の竹青荘に半ば強引に住まわせる。清瀬には「夢と野望」があった。もう一度、走りたい、駅伝の最高峰、箱根駅伝に出て、自分の追求する走りを見せたい。その「夢と野望」を「現実」にするにはあと一年しかない。そしていま強力な牽引者が彼の目の前に現れたのだ。竹青荘は特異な才能に恵まれた男子学生の巣窟だった。清瀬は彼らを脅しすかし、奮い立たせ、「箱根」に挑む。たった十人で。蔵原の屈折や過去、住人の身体能力と精神力の限界など、壁と障害が立ちはだかるなか、果たして彼らは「あの山」の頂きにたどりつけるのか』

 映画化もあったようですね。見てないけど。
 個人的な感想を言えば、前半はあまり面白くなかった。後半の予選会あたりからスポーツの迫力が書かれて「風」を感じるようになって、一気に読めた。
 スポーツファンにお勧め。どうせ正月に箱根駅伝を見るなら読んでおく価値あり。なお、復路の順位争いがテレビの映像の順位だけではなく往路のタイム差もみないと最終の順位も分からないのですね。ここまで詳しくは知らなかった。
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「小倉昌男 祈りと経営」

2016年08月23日 | 日記
森健(小学館)

副題が「ヤマト『宅急便の父』が闘っていたもの」です。
会社を辞めてから、福祉の世界に行った小倉の唐突な印象の転身?が何となく謎めいていて、世間の関心を引くものだったのでこのような本もできたのだろうか。結構評判になっており、図書館でもなかなか順番が回らずやっと読めた。
人間の表ばかりでなく、裏や家族といったものもひっくるめて評価するのは難しい。複雑なものがある。人に知られたくない面だってあるだろう。結局それに関係しての福祉だったのかもしれない。

内容紹介は
『ヤマト「宅急便の父」が胸に秘めていた思い
2005年6月に亡くなったヤマト運輸元社長・小倉昌男。
「宅急便」の生みの親であり、ビジネス界不朽のロングセラー『小倉昌男 経営学』の著者として知られる名経営者は、現役引退後、私財46億円を投じて「ヤマト福祉財団」を創設、障害者福祉に晩年を捧げた。しかし、なぜ多額の私財を投じたのか、その理由は何も語られていなかった。取材を進めると、小倉は現役時代から「ある問題」で葛藤を抱え、それが福祉事業に乗り出した背景にあったことがわかってきた――。
著者は丹念な取材で、これまで全く描かれてこなかった伝説の経営者の人物像に迫った。驚きのラストまで、息をつかせない展開。第22回小学館ノンフィクション大賞で、賞の歴史上初めて選考委員全員が満点をつけた大賞受賞作』

著者略歴
森/健
1968年1月29日、東京都生まれ。ジャーナリスト。92年に早稲田大学法学部卒業。在学中からライター活動をはじめ、科学雑誌や総合誌の専属記者で活動。96年にフリーランスに。2012年、第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。15年、『小倉昌男 祈りと経営―ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』で第22回小学館ノンフィクション大賞受賞

・・・確かにノンフィクションとして丹念な取材の上に書かれていると思う。労作だけど、一方でそっとしておいてもよかったのにね、とも思うのですよね。
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「金魚姫」

2016年08月18日 | 日記
荻原浩(角川書店)

 久しぶりで小説を読んだ感じがする。
つまり、架空のいわばウソ話だがそれに没入、すっかりお話に魅入られて最後まで一気に読まされた。
 一種のおとぎ話だが、ユーモアが活きていて展開が軽やか・・・過去と現在と時々話を入れ替えるのがいい場面展開になっているとともに、背景の説明になる。
 古代中国の女の「りゅう」がなぜ日本語を解するのか、真面目に考えたらヘンだけど、それをちょっと古い日本語・にして雰囲気をだすなど細工がうまい。最後の章の種明かし的な場面での展開には理屈に合わないところもあるがそれを無視しながら「さてどうなる・・・」とストーリーを追いかけさせるなど「お話」が巧みにできていて十二分に楽しめた。
 ファンタジーだけどミステリ風な展開で読者を引っ張るのだ。

内容紹介は
『勤め先の仏壇仏具販売会社はブラック企業。同棲していた彼女は出て行った。うつうつと暮らす潤は、日曜日、明日からの地獄の日々を思い、憂鬱なまま、近所の夏祭りに立ち寄った。目に留まった金魚の琉金を持ち帰り、入手した『金魚傳』で飼育法を学んでいると、ふいに濡れ髪から水を滴らせた妖しい美女が目の前に現れた。幽霊、それとも金魚の化身!?漆黒の髪、黒目がちの目。えびせんをほしがり、テレビで覚えた日本語を喋るヘンな奴。素性を忘れた女をリュウと名付けると、なぜか死んだ人の姿が見えるようになり、そして潤のもとに次々と大口契約が舞い込み始める―。だがリュウの記憶の底には、遠き時代の、深く鋭い悲しみが横たわっていた』

著者略歴
荻原/浩
1956年、埼玉県生まれ。広告制作会社勤務を経て、コピーライターとして独立。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞を受賞

気に入った文章を引用・・・「女と燕の子は一度飛び立てば同じ巣には戻らん。千年の古(いにしえ)からの理(ことわり)だ」
まあ、楽しめますよ。お勧めです。
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「チャイルド44」上下

2016年08月17日 | 日記
トム・ロブ・スミス(新潮文庫)

舞台は旧ソ連というのが珍しい。だからこそ、その設定が面白い。
そして一種のどんでん返しが効果がある。共産主義、スターリン時代だから、その体制が持つ不条理さが根底にあって成立する話。
それに絡むのが夫婦のありかたであり親子関係でもある。
小説の舞台が飢餓のウクライナから始まるがそれが最期につながってくるとは想像できなかったところが意表を突くが、総じてみればこれは「でき過ぎ」の設定でしょう。
映画化されて好評だったようだが、映画の冒険話の展開だと派手なアクションやら結末になって面白いのだけれど、小説だとその「粗さ」が目につくのが残念でした。
旧ソ連の体制下での冒険物語だし主人公夫婦の関係、結局貧しさが腐敗や権力を生んでしまう宿命みたいなものがやりきれない。

内容紹介は
『この国家は連続殺人の存在を認めない。ゆえに犯人は自由に殺しつづける――。リドリー・スコット監督で映画化! スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作! 』

著者略歴
スミス,トム・ロブ
1979年、ロンドン生れ。英国人の父とスウェーデン人の母を持つ。2001年、ケンブリッジ大学英文学科を首席で卒業。在学当時から映画・TVドラマの脚本を手がける。処女小説『チャイルド44』は刊行1年前から世界的注目を浴びたのち、’08年度CWA賞最優秀スパイ・冒険・スリラー賞を受賞

・・・いろいろ考えさせられるところがある。面白い活劇ものだと思えば良いかな?
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