スカーレット手帖

機嫌のいい観客

オセロ -まさに、勝手にふるえてろの境地

2013-06-28 | 観劇ライブ記
世田谷パブリックシアタープレゼンツの「オセロ」

名古屋公演を見てきました。2週連続でアートピアホールへ。
職場から徒歩5分なんです。地方だけど、こういうとき都心勤務は得だな~

ちなみにアートピア以外には徒歩圏内に
・中日劇場(芝居、大衆演劇、宝塚など)
・県芸ホール(クラシック、オペラなど)
・クアトロ(ロック系ライブ)
・ブルーノート(ジャズライブ)

ちょっと行って
・御園座(もう閉まるけど歌舞伎など)
・ゼップ(大型ライブ)
・名鉄劇場(本多劇場の地方公演多い)
・日特ホール(テニミュ!)

なんかがあります。全部会社から20分以内。

東京の劇場数と公演数の豊富さにはおよばないけど、
自分の好きな演目のラインナップと合致すれば、チケット競争率も含めて
かなり名古屋は恵まれてる、と思う。
しかもその中でもうちの職場の立地はすんごく良い場所にあるので、行きやすい。
会社に入ってすぐのころは全然その価値に気付かなかったなぁ~
交通費かからずに平日すぐに演劇やライブを観にいけるのって
ほんとにすばらしいと最近思います。
ちょっと遠いと、交通費でパンフ代以上になったりすることもあるもんね。



***


そんなわけで「オセロ」ですが。



主役は仲村トオル、山田優。演出、白井晃。



シェイクスピアについてはあんまり知らず。
4大悲劇ということなのですが(『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』、『マクベス』)
マクベスについて、以前ゲキシネで「メタルマクベス」観たぐらいしかわかりません。
ちなみにメタルマクベスは衝撃だった。
枠組み以外はぜんぜんマクベスじゃなかった(ロックだった)んだけど、見入りました。
松たか子がすばらしかった。あと、3人の魔女が強烈だったわ。


演劇の神様の作品だけあり、それこそ赤穂浪士じゃないけれど
毎年毎年いろんなオセロが上演されているのですが、
今回の「オセロ」は、時代や扮装は現代演劇の体をなしつつ、
セリフは古風な福田恆存訳、(※福田恆存さんてはじめて知りましたスミマセン)
そしてこれがいいたい、
演出が斬新過ぎて震えた。




<以下ネタバレ入ります>





まずセットがおかしい。演劇の稽古場だ。またはトイレか。
音響さんの机が変に客席の前の方にある。

へぇ~なにコレ、と思っていると、
地味なおっさんが出てきて、音響さんの場所に座り、
マイク片手に稽古場で演出家がゴーサインを出すようにしゃべりだす。
「ハイ、どうぞ」
(これが役者なのですが。)
で、おもむろに他の役者が舞台に出てきて、とつぜん動きをはじめました。
リハなのか、ハプニングなのか、と気持ちがざわついているままに、
自然と舞台がはじまります。
なんだろう、ちょっとここで、去年観た「カワイク」を思い出した。
そしてもう、そこからは客席を巻き込んだ嘘かほんとかどこまでプランなのか、という芝居の進行。
2階席だったので、わたし自身は巻き込まれなかったけれど、
民衆に語りかける場面では、客席を総立ちさせる。
キャーこんなのはじめて。わくわく。

さらに、音楽が生演奏。
稽古場の隅にいるような体裁で
アコーディオン+チェロ+コントラバスの三重奏、
これがなんとも繊細に、調和からイヤな不調和までを醸し出すのです。

そこに、役者が効果音として芝居しながら一斗缶を叩いたり殴ったり放り投げたり。
ほんま、こんなに舞台で一斗缶がべこべこになる音聴いたのって
吉本新喜劇の島木譲二のカンカンヘッド以外ではじめてですわ。


こういう実験演劇?みたいなやつって(みたことないけど)
いろいろあるんだと思うけど、
すごく洗練されているように感じました。
ハプニング的な演出が多いから、観ている方は椅子に座って安穏としては
していられない。
だけど、そんなふうに巻き込むけどゆだねていなくて、
演出の世界観ができあがってる。
ここがすごいとこだと思った。


さいごは当然、スタンディングオベーションでした。
もう、最初の拍手からスタオベしたかった。
わたし感動の沸点低いのでわりとすぐ感動するんだけど、
今回はまじでぞくぞくと震えました。
2階席なのにだぜ。
正直あんまし期待してなかったのもあって、
輪をかけて感動したのかも。


役者について、
まず、見目のきれいな3名(仲村、山田、加藤)がならんだ美しさと迫力。
みんな長身なので、かっこいいんです。
と、それ以外の芸の立つ脇役(特に赤堀雅秋、高田聖子)のうまさ。
このバランスがよかった。
出てる役者が多すぎないこともあって、集中して見られたのもよかった。


いや、思った以上に加藤和樹がよかったわ~



まあ、このとおりのイケメンですし、
テニミュ関連でだいぶ私としてもなじみがあるんでその底上げもあると思うけど、

わりと仲村トオルと山田優が棒なので、
(各人それが魅力なんだけど)
その隣にいるキーマンとしてはとてもよかったと思った。
声も出てたし。かっこいいし。


山田優はスタイルよすぎわろた…
そして、あんまり動きもせりふもうまくないところが
今回役にぴったりはまってたんだよね。
美しい妻が、純粋すぎてハメられてしまう人なんだけど。
山田優って、すごく「いい人」な感じするじゃないですか。
ヤンキーとか優等生とかそういう意味じゃなくて、
なんか、素直な、まっすぐな人、というか…
ちょっと鈍いというか。ぜったいに策士ではない。
策略がある場合もあるかもしれないが、周りに見抜かれている。
そしてそこが魅力でもあると思うんですよ。憎めない感じ。
マツコデラックスもそんなようなこと言ってたと思うけど。



まあでもやっぱ、今回いちばんいいたいことは、


白井晃、天才じゃねえ?




以上でした。