スカーレット手帖

機嫌のいい観客

すうねるところ

2012-09-18 | 観劇ライブ記



「すうねるところ」名古屋公演を観てきました。


4人芝居です。役者は、


・薬師丸ひろ子



個人的には木更津キャッツ!にゃー!
の印象がどうしても強いが、
「セーラー服と機関銃」「ちゃんリンシャン」「玉置浩二元嫁」「三丁目の夕日」
抽斗を多量に持つ脅威の女優。
ちなみにわたしは時たま、とくに年配層から、この人に似ていると言われることがある。
丸顔で昭和風なところがおそらく。



・篠井英介



女形の怪優。
テレビドラマ見ている人はぜったい見たことがあるくせのある役者さん。
この人が殺されるところもしくは狂気におかされるところ、絶対見たことあるやろ!?



・村井良大



昨年から私が全勢力を傾けて応援している(※観劇だけですが)若手俳優。
今回は村井くんのコンディションを中心に確認していた。
またの名を村井先生。
(先生の役やってるから というのもあるんだけど、わたし個人的にこの人の役者ぶりが
 若いのにしっかりしているなあ と感銘を受けていることから
 最近「村井先生」と呼んでいる。
 あれです、サラリーマンの先輩が後輩に向けて「よっ、田中選手」とか
 「鈴木大先生、お願いします」とか言ったりするノリですね(※おっさん))




・萩原聖人



「とどま~ることを知らない ときの~なかでいくつもの
 移りゆく街並みを 眺めていた」

といえば萩原氏(若者のすべて)。
えっ、若者のすべてからもう18年も経ってるの?衝撃やん。



というこの4人でした。


そして脚本家は有名な夫婦脚本家の「木皿泉」
『すいか』『Q10』など… 
あまりわたしはどのドラマもちゃんと観れなかったんだけど、
まわりにめっちゃくちゃハマっている人がいたから、
どうやらすごいらしい、ということは知っている。

まあ、キャスティングとスタッフ陣から考えて
村井君が完全に1段階上のステージに上がった記念すべき舞台といえる。
しかも近所に巡業に来てくれるということで、喜んでチケットを取り、楽しみにしていました。



感想としては、なんかひとことでいうと軽くてやさしい作品でした。

エチュードっていうのでしょうか。
冒頭から、ああいう感じで会話がコロコロと続いていきます。
場面はパン屋をいとなむ家の居間。基本この状態で最後までつづきます。場面転換なし。
人間のふりをして子供を育てている吸血鬼3人がやくたいもないことを話し続ける。
こそこそと“くすぐり”が入ってくる。「さあ!笑わんかい!」という感じでもない、不思議な空気感。
それでもちょっと笑ってしまうのは、脚本の妙か、役者(※おもにシノイさんが発火役)がうまいのか。

そんな中、人間の子供(反抗期の高校生)が得体のしれない『歯』を持って帰ってくる。
子供は、家の「ふつう」に違和感を感じ、大人になろうとしている。
子供はどんな生き方を選択するのか。おろおろと見守る3匹(人?)の『保護者』。
(ちなみに村井先生が子供です。)

喜劇と悲劇(ということはないか。いわゆる「真剣な場面」ですね)が会話の中でくるっくる入れ替わるので、
どちらのモードで観たらよいのか迷ってしまう。
迷いながらお話はどんどん進む。


私、最近思うんですが、演劇を観るときの心境として、
「金を払ったからには劇ならではの楽しみを得たい」という気持ちがあります。
映像じゃなくて生舞台だからこそ、おおげさな感情表現に自分の感情を揺さぶられる
ということは確実にあるから。

例を具体的にいえば、

笑いの筋肉を準備しておいて、思いっきり笑う。
感動用の涙腺を緩めておいて、思いっきり泣く。
暗喩への感度を高めておいて、謎めいた内容に思いっきり酔う。

いずれもカタルシスとして機能します。
そして満足度も高めてくれる。
私はあまり演劇をみまくっている者ではないけれど、
そういうふうな観客の期待と、作品の成果 というのは
けっこうあるのではないかと思います。


そういう意味で言えば、
今回の舞台はこういう「ザ・演劇」的な期待値を満たしてくれる表現は
あまり見られなかったような気がしました。
どちらかというと、ほんとに「ドラマ(映像作品)っぽい」ものに思えました。
でもなぜか、物足りなさをあまり感じない という不思議さ。


これが 会話劇の妙 というやつでしょうか。


じゃれあいのような言葉のやりとりの中に
真剣さがあったり、
コミカルな場面から唐突に生き方の話になったり。

笑いと嘘っぽい事実とデフォルメされたような独白の中に込めた思いと、
家族のつながりと真剣な人生の決断となにもかもが地続きになっている。
綺麗にクレッシェンドが付くように、何もかも美しくクライマックスを迎えるわけではない。
これって意外に人生のリアルなのかもよ、
という感じも なんだかしたような しないような。



「みんなまいご」だから、悲しいんだけどあたたかくてゆるい紐帯のようなもので結ばれている『家族』


という状況も、
吸血鬼が子供を育てるというファンシーな虚構と
日常生活にありそうなリアルをいい意味でクロスさせていたような。



木皿泉作品は 深いぞ

というような話を聞いていましたが、


やはり、深いかもしれない。


軽いのに、おもしろいのに、不思議なのに、芯がわからない。
(おいしいのにカロリーゼロ みたいですねー)



てなわけで、いろいろ思ったのですが、
感想をむりやりまとめると、


会話劇って面白いという発見
・悲喜こもごものグラデーションがリアルを引き立たせるのでは
・パンフレットがカワイイ(パン)





そして追記、1点、はて? と思ったのは


・村井くんがしっかりしていてあまり高校生に見えない


ということでした(笑)
先生!落ち着きすぎてる!!
堂々とし過ぎ!たのもしいよ!!!




村井先生については、来月および再来月も追いかけます。