秋明菊の綿毛
ニ
斉明盛服、非礼不動、所以脩身也、去讒遠色、賤貨而貴德、所以勧賢也、尊其位重其祿、同其好悪、所以勧親親也、官盛任使、所以勧大臣也、忠信重禄、所以勧士也、時使薄斂、所以勧百姓也、日省月試、既稟稱事、所以勧百工也、送往迎来、嘉善而矜不能、所以柔遠人也、継絶世、 拳廃国、治乱持危、朝聘以時、厚往而薄来、所以懷諸候也、
凡為天下国家、有九経、所以行之者一也、
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斉明盛服して、礼に非ざれば動かざるは、身を修むる所以なり。 讒を去り色を遠ざけて、貨を賎しみて徳を貴ぶは、 賢を勧むる所以なり。 其の位を尊くし其の禄を重くし、其の好悪を同じくするは、親(親しむこと)を親しむを勧むる所以なり。 官盛んにして任使せしむるは、大臣を勧むる所以なり。 忠信にして禄を重くするは、士を勧むる所以なり。 時に使いて斂(おさ)むるは、百姓を勧むる所以なり。 日に省み月に試みて、既稟事に称(かな)うは、百工を勧むる所以なり。 往くを送り来るを迎え、善を嘉(よみ)して不能を矜(あわ)れむは、 遠人を柔らぐる所以なり。 絶世を継ぎ、廃国を挙げ、乱れたるを治め危うきを持し、 朝聘(ちょうへい)は時を以てせしめ、往くを厚くして来たるを薄くするは、諸候を懐くる所以なり。
凡そ天下国家を為むるに、九経有り。 之を行う所以の者は一(いつ)なり。
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(では、九経をそれぞれに全うするにはどうすればよいか。) 潔斎して身を清め立派な礼服を身に付け、何事も礼の定めに適う様に行動すると、それが我が身を修めるということになる。 讒言を退け女色を遠ざけ、貨財を軽く観て人の徳を尊重して行くと、 それが賢人を励ますことになる。 その位を高くし俸禄を多くして、好むこと憎むことを共に分かち合う様にすると、それが肉親を励ますことになる。 官職が備わって、それぞれに権威を持ち、それを大臣が自由に任命して働かせる様にすると、それが大臣を励ますことになる。 真心から対応して、その俸禄を重くして行くと、それが士人たちを励ますことになる。 公務の使役は(農事を妨げない)農閑期だけにし、(国の費用を節約して)納税を少なくすると、それが万民を励ますことになる。 日ごと月ごとにその工作を点検し、仕事ぶりに応じた扶持米を与える様にすること、それが諸々の工人たちを励ますことになる。 遠いくにへ帰って行く時は鄭重に送り出し、やって来た時は鄭重に迎え入れ、(中国の文化を身に付けた)立派な人物は褒め称え、駄目な人物には思いやって優しくすると、それが遠い異国の人々を和らげることになる。 世継ぎの絶えた国は後継ぎを立ててやり、滅びた国はまた興してやり、乱れた国は治まる様に、傾いた国は立ち直る様にして、諸侯が自分で朝廷に出向く朝の礼と、重臣を派遣する聘の礼とを(混乱のない様に)一定の時に行わせ、こちらからの(賜り物や宴会)の施しは手厚くし、向こうからの貢物は軽くさせると云うことにすると、それが諸侯たちを懐け従えることになる。
すべて天下や国や家を上手く治めて行くのには、(この様に)九経つまり九つの原則と云うものがある。しかし、それらを実践する為の根本はと云えば、ただ一つである。