天使に出会った実話 1~12 と同じ著者の、別の本を入手したので、少しづつ翻訳していく。
Carmel reilly 「With angels beside us」より
ジム 56歳
ある10月の吹雪の日に、私は天使に助けられたと思う。
私はカナダの友人の家に滞在していて、車で食料品を買いに出かけた。
店のある町までは5マイル以上あり、その間には何もないという田舎である。食料品を買ったあと、映画を観て外に出てみたらけっこうな雪が降っていた。
予報では夕方過ぎから大雪と言っていたから、油断していた。
私は荷物を車に積み、注意深く車を出した。最初のうちは、うっすら道路が見えて、このままゆっくり行けばなんとか家に帰れるのではないかと思った。
しかし、雪はどんどん激しく降ってきて、どこが道なのかもまったくわからなくなってしまった。
対向車も1台もなく、上下左右真っ白の世界に自分だけがいるようだった。
どの方向に向けて走ればいいのやら、途方に暮れながら慎重に進んでいると、突然スリップし、ゆるやかなスロープを車がゆっくりと滑っていく。
たぶん道路を外れて路肩の草地かどこかに降りてしまったのだろう。車のエンジンはかかったものの、スロープを上って道に戻ることは無理そうだ。
私には3つの選択肢があった。
ひとつは、歩いて町に引き返す。
ふたつめは、車の中で誰かが通りかかってくれるのを待つ。
みっつめは、友人の家に向かう。
みっつめの選択が、1番現実的じゃない。なんといっても、ここから友人の家までは、今まで来た距離の倍以上はあるのだから。
車の中で待っていたら、間違いなく凍死するに違いない。
残るはひとつ。町まで引き返すこと。
私は厚いコートを着て、ブーツを履き、歩き出した。しかし、歩けども歩けども、町はいっこうに見えてこない。雪に足をとられて歩きづらい。でもこのまま歩き続けていれば、きっといつかたどり着けるだろうと思った。
白以外に何もなかった視界に、鉄条網がぼんやりと見えた。
それは道路と草むらを分ける柵で、もし私がそれに沿って歩き続けていたなら、きっと町まで行けたと思う。
というのも、その時、私は町の明かりがぼんやりと遠くに見えたような気がしたので、柵を離れて、明かりが見えた方向に向かって歩き出したからだ。
しばらく歩いていると、見えたと思っていた明かりが見えなくなっていた。あれは幻覚だったのか。
そう気づいたときには遅かった。後ろを振り返っても、どこをどう歩いてきたかわからず、再び白一色の世界に一人だけ取り残されてしまった。
雪の中で遭難した人たちの話を思い出していた。助かった人は、たしか雪室を作ってその中にいたのではなかったか。じゃあ、助からなかった人は、なぜ助からなかったんだっけ?私は本当に心配になってきた。
その時である。
誰かが呼んでいる。
「こっちだ!」
もちろん、私は声のする方に向かった。
誰か奇特な人が、こんな吹雪の中で私を助けようとしてくれている。
「こっち、こっち!」
「そう、そのまま歩いて」
声はすれども姿が見えず。私はその声を頼りに歩き続け、恩人の姿を見たいと思った。
すると突然、1軒の家が目の前に現れた。
これも幻覚かと思うほど、まぶしい明かりが窓から漏れている。ドアを叩くと、老夫婦が出てきて、私を見て驚いた顔をした。
その家は野中の一軒家で、もしその家を見逃していたら、私は翌日まで建物らしきものを見つけることはできなかったと思う。
私は老夫婦の旦那さんのほうに、助けてくれたお礼を言った。あなたがいなかったらここまで来れなかったと。
すると彼はきょとんとした顔をして、私らはずっと居間で本を読んだりしていたよ、と言った。
そして言葉を失っている私に、あなたの守護天使に感謝しなさい、とやさしく言った。
私はあれは天使だったと思うけれど、本当のところはわからない。
でもわかっているのは、あのまま自分の思う方向に歩き続けていたら、確実に凍死していたということだ。
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