Carmel reilly 「With angels beside us」より
Sally 42
私はいつも、若者たちの車の運転が乱暴であることに懸念を抱いていた。彼らは命知らずで、他の人のことなどまったく気にかけていないようだ。
田舎に住む私の友人、アンナの話である。
ある夜、眠っていたアンナは、誰かが乱暴にドアを叩く音で目が覚めた。
ドアを開けると、とても取り乱した様子で女性が立っていた。
その女性は、事故の通報をしたいので電話を使わせてもらえないだろうかと言う。
女性が電話で話している内容によると、車の事故があり、3人はまだ息があって、そのうち一人は茂みの中に放り出されている、ということだった。
アンナは二階の寝室に行って上着をひっつかみ、家の鍵をつかんだ。
何か助けになるかもしれないと思ったからだ。
アンナが1階に降りた時、女性はもういなかった。事故があったという場所は、アンナの家から歩いて5分ぐらい、むろん彼女は走った。
で、これが不思議なことなんだけれど、アンナが家を出たその瞬間に、車同士が衝突する音を聞いた。急ブレーキの音、そして爆音が2回続いた。その直後、大きな火柱が上がるのが、樹々の向こうに見えた。
アンナはできる限り速く走って現場に向かった。
2台の車が路肩にあり、その1台は逆さまになって燃えていた。もし誰かが中にいたとしたら、助からないだろう。
もう1台は柵を突き破って木の茂みに突っ込んでいた。
アンナの家に来た女性は、どこにもいない。
そこへ救急車や警察の車が次々にやってきた。文字通り、事故発生から1分もたっていない。
救急隊員や警察官が忙しく走り回り、救急車はここから5分もかからない町の病院に向かった。
そのあと警察官がアンナの家に来て、事故の詳細を尋ねた。
アンナは、辻褄が合わなくても正直に説明するしかなかった。
ある女性がいきなり訪ねてきて、事故の通報をし、アンナが外に出た後に事故が起きた音を聞いたということを。
アンナはその時、他の事故が起きたのだと思った、とも話した。
警察官は、全員十代の若者で、3人は命を取り留めたこと、燃えた車にいた一人はたぶん即死だったこと、2台の車とも常識を超えるスピードで走っていて、コントロールを失ったのだろうと説明した。
後日、アンナはその事故についての新聞記事を読んだ。
記事には、警察が、誰かわからない事故の通報者に感謝している、なぜなら、通報者のおかげで3人目の若者の命が助かった、と書かれていた。
3人目の若者は少女で、車のフロントガラスを突き破って深い茂みに投げ出されたから、女性の通報がなかったら発見が遅れて、彼女は助からなかっただろうということだ。
この話はこれで終わり。
あの女性が、なぜ事故が起きる前に、事故が起きることを知っていたのか。
通報は、たぶんその少女を助けるためだったのではないか。
アンナの疑問は答えを見つけ出せないまま、宙に浮いている。
私はスピリチュアルとかいったことをあまり信じないのだが、私は何か目に見えない力が働いて、あの少女の命を救った、ということを認めないわけにいかない。
私たちはなぜここにいて、どんなにここにいることの大切さをないがしろにしているか。
私たちは生かされていることのありがたさに日々感謝し、与えられた時間を無駄にしてはいけないと、改めて思う。