衝撃のニュースが飛び込んできた。「CG」と並ぶ二玄社の看板雑誌「NAVI」が、2月下旬に発売の4月号で休刊するとのこと。
クルマをハードというか機能面だけではなく、その時代にそのクルマがどういう意味合いをもつのかというソフト面からの評価をするこの雑誌と出会ったのは、高校生の時だった。その斬新な切り口に私は大いに衝撃を受け、私の自動車観に大いなる影響を与えた。だが、インターネットの普及による出版不況と、昨今の自動車不況の波には、逆らえなかったのであろう。
とはいえ、この雑誌も、ここ数年はあんまり購買意欲をそそるモノでなくなっていたのも、事実ではある。昔は毎号買っていたが、今では毎年2月号の「その年の○と×」しか買わなくなっていた。それも今までの惰性で買っていたようなもので、現在のメインのライターたちの、斜に構えた感じというか、真摯にクルマそのものを語っていない部分が、正直言ってあまり好きではなかった。むしろテリー伊藤氏・ドン小西氏・近田春夫氏の、「裏NAVI TALK」の方が、よっぽど面白かった。
今回この号で、私にとって一番興味深かった記事は、故エヤトン・セナ氏のヘルメット開発ストーリーだった。
我が家に現存する一番古い「NAVI」は1994年の7月号。実際には、1984年からこの雑誌を購入し続けていた私なのだが、引っ越した時に、妻の教育的指導により、泣く泣くほとんどを処分したのだった。
なぜこの号を保管していたかというと、セナがイモラで散った時の追悼記事が載っていたからである。セナは、やはり私が生涯で一番愛したドライバーなのだ。
そして、いまも私の宝物として保管してあるのが、「ベスト・オブ・ナビトーク1984-1992」という一冊である。
やはり、「徳大寺有恒」「館内端」「大川悠」の3巨匠による「NAVI TALK」は、まばゆいほどに輝いていた。
1991年のベストは「ホンダ・ビート」。そして、2位に「カローラ」が来ているというあたりが泣かせる。
この3氏は、文化のみならず、その「クルマそのもの」についても、知的にかつ熱く、熱く語っておられた。その視点には、クルマに対する溢れんばかりの愛情が感じられた。できることならば、この3氏にこそ、昨年登場した「レガシィ」「プリウス」「アクセラ」「Kizashi」や「iQ」あたりを斬ってほしかった・・・やはり、「NAVI」が休刊せざるを得なかった最大の原因は、この3氏の後継者が育たなかったことにあると、私は思っている。合掌。
ダイナミックセーフティtestはどうなるのでしょう・・・
クルマ業界だけではないのかもしれませんが、やはり、心の琴線に触れる文章を書けるライターが、あまり育っていないような気がするのです。
ダイナミックセーフティtestは、おそらく「CG」にその場を移して、継続されるような気がするのですが・・・そう期待したいです。
今の自動車雑誌の内容に関しては獅子丸さんが仰るとおりだと思います。昔のことは詳しく知りませんが、今の自動車評論家やモータージャーナリストの方々は評論やジャーナリズムなどという言葉を使うにはおこがましいとまで言ったら言い過ぎかもしれませんけど、それに値する仕事をしている人は極めて少ないと思います。もう殆ど自動車メーカーの広報の一翼をになっていて記事を見ていてもシラケちゃうんですよね。広告の冊子を買ってるのか?思えてきて馬鹿馬鹿しくなります。内容もクルマ好きが読むことを前提とした、マニアック過ぎで、一種の閉鎖感があって、偏った趣味志向のものに向かってしまっているような気がしてなりません。
自動車雑誌に限らず出版業界は厳しい状況にありますけど、本屋のから自動車のコーナーが無くなる日が来るのではないかと心配でなりません。
NAVI休刊は残念なことでしたが、この本の場合は、出版不況のみならず、やはり内容自体に魅力が薄れてしまったことも大きな要因だったと思います。
徳大寺・館内・大川の3氏の「NAVI TALK」終了と、ライターの多くが「ENGINE」誌に流れてしまった時点で、実質的に多くの購読者を失ってしまったのでしょう。
そういえば・・・最近コンビニには、自動車雑誌を置かないところも多いようです。クルマ好きには、冬の時代になってしまいましたね。
NAVIが魅力を失った理由がいくつか思い付きますよね。
ところでライトユーザ向けとはいえ、webCGも記事が極めて浅い時があってがっかりします。
その中で、カバタさんなどが試乗記を書いていると安心しますよね。
NAVI創刊の頃は、新進気鋭の若手だった下野康史氏も、今では55歳・・・やはり、なんというか、この国が全体的に後継者不足であることを、強く感じてしまいます。出版業界のみならず、プロ野球や相撲界、歌謡界、そして農業などなど・・・
ところでwebCGといえば、スバルの「リニアトロニック」に関する記述で、私の感想と正反対の記事があったので驚きました。おそらくこのライターの方と、私のドライビングスタイルは相当違うのでしょうね。それはそれで面白いといえば面白いのですが・・・
→http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/i0000022145.html?pg=1
創刊後の10年間くらいは、本当に「NAVI」の黄金期だったですネ。
徳大寺有恒氏・館内端氏・大川悠氏の「NAVI TALK」には、クルマを評価する切り口の斬新さはもとより、「クルマに対する愛情」がふつふつと感じられたものです。特に、大川さんが中和剤的な役割を果たしておられたのが印象的でした。
この3氏が一線から退いてから、あの本のパワーは、はっきりと落ちてしまいました。
ああ、捨ててしまったバックナンバー。なんて馬鹿なことをしたんだろうと、大いに後悔しています。