Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§9「留学」 遠藤周作, 1968.

2013-04-11 | Book Reviews
 期待に胸膨らませて留学した三人の物語を綴った短編集です。

 太平洋戦争後、最初のフランスへの留学生の物語。胸膨らませた期待がいつの間にか廻りからの期待に沿うように生きた時にもたらされる不安や悩みと葛藤を描いた「ルーアンの夏」

 自らの信仰を信じて、司祭になるべく渡欧した最初の留学生の物語。司祭となった彼が日本で待ち構えていたのは根付きつつあったキリスト教を絶やさないよう欧州から潜入する司祭達と殉教する人々の姿を描いた「留学生」
 
 自らの出世や地位を得ることを信じて留学したものの、なぜ日本人が仏文学者を志すのか?との問いに答えることが出来ない大学講師の姿を描いた「爾も、また」

 司祭になることや仏文学者になることは、自らの目標や役割を与えることであるものの、実は目的ではないのかもしれません。

 自らが誰であるかということよりも、自らがなにを成すべきかという琴線に触れたとき、目的が明らかになり、その目的を達成するために尽くしうるあらゆる行動を自らが信じた時にこそ、自らの存在の意味が明らかになることを示唆しているような気がします。

初稿 2013/04/11
校正 2021/03/19
写真 同志社大学 クラーク記念館
撮影 2013/03/19(京都・今出川)

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