Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#15「凜とした緑 重なる雲と影」

2012-11-27 | Liner Notes
 徳川綱吉の治世に建てられた儒学の祖・孔子を祀る湯島聖堂。

 飛鳥時代の仏法伝来による蘇我氏と物部氏の対立や平安期以降の朝廷と武家との均衡によって、宗教が排斥された人々の祟りを鎮め、絶対的な存在による救済や加護を説くことで、隔たりのあるものどうしが隔たりを平らかにしようとした歴史。

 宗教による治世の限界と安定した世の中を末永く維持するために、人心を収束させるための方法論として儒教が重要視されたのかもしれません。

 「仁」とは人を思いやること。「義」とは利欲に囚われず、成すべきことを果たすこと。「礼」とは人の上下関係で守るべきこと。「智」とは学問に励むこと。「信」とは約束を守り、誠実であること。

 人としての徳を定義し、努めることで、すべての人間関係を維持するための思想が儒教のような気がします。

 必ずしも、芸術的価値が卓越した建築物ではないかも知れませんが、260年にも及ぶ安定した治世を支え、凜とした多くの人々を排出した修身の場として捉えてみると、何かしら感慨深いものがあります。

初稿 2012/11/27
校正 2021/04/14
写真 湯島聖堂, 1690.
撮影 2012/02/02(東京・神田駿河台)

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