Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α36E「ジル」朝倉響子, 1993.

2023-07-22 | Exhibition Reviews
「あっ、大阪の御堂筋で見た『ジル』だ!」※1

 ちょうど一年程前に東京・日本橋で偶然めぐり逢ったその姿が、約八年前に大阪・御堂筋でめぐり逢ったあの姿をなぜかしら思い出させます。

 朝倉響子の作品には同じ名をつけたものが幾つかありますが、この二つの「ジル」は、つま先を立てて椅子に腰掛けてはいるものの、両手の指の絡ませ方や表情からはそれぞれに違う印象を与えてくれます。

 ところで、〈時間〉は過去から現在、そして未来へと連続的に過ぎ去るものであると疑わなければ、作成時期や設置場所が違えば、同じ名でありながらも違う姿は別々の人がモデルであると、あたりまえに思うのかもしれません。

 でも、ひよっとしたら、その人の成長やその過程の出来事として、〈わたし〉が物語るとき、そういった〈世界〉固有の〈時間〉が存在するような気がします。

「そこにその人が存在しちゃうみたいな存在感に興味があるんです」※2

初稿 2023/07/22
写真「ジル」朝倉響子, 1993.
撮影 2015/03/21(大阪・御堂筋彫刻ストリート)
注釈
※1)α16A「ジル」 朝倉響子, 1988.
※2)「光と波とー朝倉響子彫塑集」p.90, 1980.