Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α35D「少女」朝倉響子, 1980.

2023-07-01 | Exhibition Reviews
 真っ直ぐに伸びた両脚と緩やかな弧を描いた両腕、そして、片方の靴を携える右手を左手で添えながらしっかりと前を向いた姿は、凛として咲く花のようです。

 その表情からは、なぜかしら塞ぎ込んでいたあの頃※1から、暖かい陽の光に誘われて※2、緊張を解きほぐしながら※3、ゆっくりと立ちあがり※4、再び歩み始めようとする現在までを物語ろうとしているような気がします。

 ところで、"なぜ、〈わたし〉がそう思うのか?"

時間は過去から未来へ一方向に流れると思いがちですが、〈わたし〉が現在という一瞬に、限りある記憶という過去と限りない選択肢という未来を収束させているような気がします。

 片方の靴しか履いていないのは、いまだに少しだけ躊躇しているわけではなく、ひょっとしたら、ありとしあらゆる事象に向き合おうとする心構えとほどよい緊張感を示唆しているのかもしれません。

初稿 2023/07/01
写真「少女」朝倉響子, 1980.
撮影 2023/03/11(神奈川・秦野)
注釈
※1)α31D「女」朝倉響子, --?.
※2)α32D「女 Woman」朝倉響子, 1970.
※3)α33D「Woman」朝倉響子, 1973.
※4)α34D「WOMAN」朝倉響子, 1978.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする