Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α23B「Nike '83」朝倉響子, 1984.

2023-03-03 | Exhibition Reviews
 ヘルマン・ヘッセが著した小説「デミアン」のなかで、鏡を覗きこむ少年が瞬く間に様々な顔に変貌する一節を思い起こさせます。

 さっきまで、不安そうな面影を顕わして片ひざを抱いた少女※1がいつのまにか、肩肘を張らずにしっかりと前を見ようとする少年の姿へと変貌したかのようです。

 でも、両足の踵が地についていないところは、どことなく虚ろな瞳で遠い彼方を眺める少年の姿※2をも思い起こさせます。

 ところで、限りなき言葉の数々から、それらがそうであると「わたし」が考えるとき、自ずからその意味が分かれて、眼前に存在させているような気がします。

 必ずしも交わることが無いと思っていたはずの「彼」と「彼女」もまた、ひょっとしたら、「わたし」そのものであるのかもしれません。

初稿 2023/03/03
写真「Nike '83」朝倉響子, 1984.
撮影 2022/12/17(横浜・ジョイナス)
注釈 ※1)α21B「NIKE」, 1981.
   ※2)α22B「SUMMER」, 1984.
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