Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§140「人間自身 考えることに終わりなく」 池田晶子, 2007.

2022-02-12 | Book Reviews
 2006年から「週間新潮」に連載されていたコラムを集めた「勝っても負けても 41歳からの哲学」(§139)の続編です。

 進学や職業といった進路選択を通じて「成りたい自分」になろうとしていた少年期の自分が、がむしゃらに頑張った青年期を経て、いつのまにか「もう成れない自分」に向きあわざるを得ないようなときがあると思います。

 でも、思いどおりにならぬ物事であっても、それは自分のみならず世の中の思い込みに過ぎないのかもしれません。

 また、そういった思い込みというものは他人と比べてどうかとか、他人からどう思われているかといったように自らの判断基準が自分の外にあるような気がします。

「思い込みこそが人間を不自由にする。あらゆる思い込みを見抜き、絶対自由でありなさい。そして、自ずからなるところの人間になりなさい。それこそが、こんな世の中でも、幸福である人生だ」(p.50)

 ひょっとしたら、判断基準を自分の外に求めないことが「考える」ということかもしれず、「ありのままの自分」に近づく第一歩のような気がします。

初稿 2022/02/12
写真「座る婦人像」エミリオ・グレコ, 1994.
撮影 2016/05/22(大阪・御堂筋彫刻ストリート)
発行 2007/04/20 新潮社
コメント
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