Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§10「沈黙」 遠藤周作, 1966.

2013-04-12 | Book Reviews
 数多の宣教師達が国外追放され、信徒が迫害されたキリスト教弾圧の時代。自らの信仰を確信し、日本に残された信徒を護るために、殉教を覚悟して潜入するポルトガルの司祭。

 その司祭は神の加護だけを期待するのでなく、神を疑うことなく、ただ一途に信じて布教を続けた結果、殉教する人々と棄教する人々、そして沈黙し続ける神という存在。

 貧しい信徒達が迫害される真の理由とは。司祭が棄教した真の理由とは。そして、神が沈黙する真の理由とは。彼は信徒達が迫害される理由が司祭としての自らの存在であることを知り、迫害される人々を助けるために教会を背き棄教しました。

 でも、神は沈黙し続けたまま。ただ、彼が踏絵に足をかけた時に神なるものが沈黙する意味を悟ります。

「信ずれど、期待せず」

 命懸けの人々を守った自らの選択を信じた時、その行動は誰も否定できないこと。ましてや、神なるものが存在しているとしたら、その神なるものという存在でさえも沈黙せざるを得ないということを問うているような気がします。

初稿 2013/04/12
校正 2020/07/15
写真 沈黙の空
撮影 2013/02/03(旅客機からの眺め)
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