気ままなひとこと

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読み応えのある歴史小説「炎立つ」

2015-02-03 15:04:26 | 読書
久々に歴史小説を読みました。ボランティア仲間の友人に紹介されたもので、高橋克彦著「炎立つ」“ほのお”ではなく、“ほむろ”と読むとかは、知りませんでした(汗)。

全5巻という結構なボリュームなので躊躇いましたが、読み始めたらググッと惹きつけられました。話しは、11世紀から12世紀にわたる奥州の藤原家とその周辺の男たちの物語、それを東北人(今も岩手在とか)の作家が書き上げたものです。という辺りは、20年以上も前に読んだ「会津士魂」(早乙女貢著)を思い起こさせられました。武士としての忠義を尽くしたのに、時代のいたずらのために明治政府に逆賊として虐げられた会津の人々ことと、故郷への想い・愛を大作にしたためたものですが、この「炎立つ」も同様、平和を願い続けたのに、京都から蝦夷(えみし)と蔑まれてきた東北人の意地のようなものが根底に流れているように感じました。

多くの歴史小説の世界では源氏が善玉で平家が悪玉と描かれることが殆ど、その源氏の中でも一番のヒーローの義経の敗退の末路の背景として藤原が位置づけられる物語しか知りませんでした。それが、実は、藤原と源氏にはこんな関わり、繋がりがあったとは、歴史の不勉強を改めて痛感させられました。多くの歴史書や小説が源氏の立ち位置から書かれているせいでしょうが、物事には立場の違いで異なる見方のあることを常に意識しないといけないことを再認識しました。

勿論、著者の地元贔屓の要素がなくはないでしょうが、それにしても、ここに登場する藤原の男たちの立派なことよ。この本を紹介してくれた友人の女性は、藤原経清が憧れだとか。経清が第1巻から3巻、その子・藤原清衝が第4巻、曽孫・藤原泰衝が第5巻の主役ですが、どの3人も魅力的ですね。経清と清衝が正統派武士としての面から描かれているのに対し、奥州藤原の最後となる泰衝は、武士から見た政のあり方がテーマとして描かれていました。特に終わり近くの文章に心を打たれました。

「蝦夷の国は陸奥に暮らす者ら全ての胸の中にありまする。一人一人が陸奥の国。皆が生き延びてくれさえすれば、形としての陸奥はなくなったとしても滅びはしませぬ。形などいつでもまた作れまする。大事なのは蝦夷の心を持つ者を後世に繋げていくこと。」

最後の第5巻は戦闘シーンが殆どなく、やや退屈気味に感じることもありましたが、最後のこの記述に著者の想いが集約されているようにすら思え、この言葉でもって自らが死ぬ(首を源頼朝に差し出す)ことで陸奥・蝦夷を守ろうとした主人公に感動しました。

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