気ままなひとこと

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「サラバ」(西加奈子著)さすが、直木賞!

2015-04-07 15:06:46 | 読書
上下巻で700ページ以上にもなる長編ですが、ぐいぐい引かれて読み通しました。
さすが、今年の直木賞受賞作だけのことはありました。

読み始めてみて、「良く分からないな」というのが先ずは正直な感想でした。サラリーマン家庭(両親と姉弟)の4人家族の弟の私小説的な独白というスタイルなのですが、そこで語られる内容が、やはり今風というのか、シニアの私には馴染みにくいものでした。いわば、“抑揚のない単調な”という形容が似合うようなものなのに、ぐいぐい引きずられて一週間ほどで読み通してしまったというのは不思議なことです。どんな内容かと訊かれても説明するのが難しいです。父親の二度の海外駐在(それもイランとエジプトというのは著者の体験ベースのようですが)を終えて11歳での帰国、両親の離婚、姉の家庭からの離脱、自堕落とまでは言わないまでも、私からすればかなりいい加減な10代、20代をおくった主人公が30代半ばになって自分の歩む(主人公の名前が「歩(あゆむ)」です!)道を見つけるまでの物語。読んでいて、決して楽しいという表現からは程遠い小説なのですが、不思議と退屈することなく読まされてしまうものでした。

テーマは後半になって具体的に説明されるのですが、曰く
「自分で、自分の信じるものを見つけなければいけない」、「自分だけが信じられるものを見つけろ」、「バランスを保つのに、体の芯、体を貫く幹が必要」、「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」
等々、結構哲学的なテーマなのですが、読んでいる間は、そんなことは微塵も感じさせず、ただひたすら読者を引きつける、その辺りが直木賞作品であり、本屋大賞にノミネートされている所以なのかもしれません。著者は30代後半ということですが、大したものです!

他人にどう薦めていいのか分かりませんが、退屈せずに読み通せた作品でしたし、西加奈子という作家の別の作品も読んでみたくなりました。次はもう少し短いものを(笑)。

追記:タイトルの「サラバ」とは、エジプト在住時に出会った親友との会話で使ったものであり、最後の部分で主人公が、自分の信じるものを見つけて、それを「サラバ」と名付けたものだとありました。
「名前を決めた。たくさんの言葉を孕んだサラバ。たくさんの時間と、思いを孕んだ化け物は、サラバだ。僕の神様はサラバだ。僕は生きている、僕は信じている。」
読み終えた今でも、分かったような、分からないような???

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