夕焼け金魚 

不思議な話
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逃げ水1

2023-05-13 | 創作
金魚は将棋囲碁は男のたしなみと言われた年代なので、多少は出来ます。
最近は将棋の藤井翔太叡王の活躍で将棋の方が派手ですが、金魚は囲碁の方が将棋よりはちょっとは上手かなと自負してます。
特に相手の方が同じレベルの方だと嵌まります。
ハンディーで置き碁というのもあるのですけど、勝ったり負けたりの碁敵は恋人よりも得がたい存在です。
幸運なことに近所にそのような方を見つけて、もう何日も通い詰めるようになりました。
碁敵への道を急いでいると、畦道で三人の女の子に出会いました。
みんな小学校の一年生です。
黄色い帽子をかぶっていました。
小学校の宿題で町に住む動物を探しに来たというのです。
「金魚さんなら、どこに珍しい動物がいるか知ってるでしょう」と聞かれたのです。
可愛い女の子達が目をまん丸にして聞くので、「この街の珍しい動物、飼ってる人がいるから見に行こうか」とつい言ってしまいました。
一応口止めされていたのですけど、可愛い子達にまん丸な目で見つめられると良い格好してみたくなったのです。
三人の女の子を連れて、碁敵の家に行くと「また可愛い彼女を連れてきたものだ」と喜んでくれました。
碁敵も可愛い女の子にはデレデレになるタイプです。
「この子達に逃げ水見せてやって欲しいのだよ」
「逃げ水をか」
「そうだよ、逃げ水。この子達も町の子だから知っておいてもいいだろう」
「宿題として学校で発表されるとみんなに知られちゃうな」
「それも良いじゃないか、飼えるようになったのなら、もう絶滅の心配もないだろう」
「数は少ないけどね」
「それに少しはみんなに知られないと、ペットとしても売り出せないから、良い機会だよ」と少し強引に説き伏せたのです。
碁敵の案内で、裏庭に子供達を連れて行ったのです。
「ここに何かいるの?」
「何もいないじゃないの」
三人は何もいないと不満げでした。
「よぉく見てごらん。キラキラしているものが見えないかな」
そう言われて、三人が裏庭をもう一度よく見ると庭の片隅にキラキラ光る水たまりのようなものがありました。
「動かないよ」
「じゃ、近づいてごらん」
女の子がキラキラ光る水たまりのようなものに近づくと、女の子の歩幅の距離でそのキラキラ光るものが動きます。
「動いた」と言ってもう少し近づくと、もう少し動きます。
「追いつけない」
「追いつけないように逃げてるからね」
「抱っこしたいから、捕まえて」と言うのです。
仕方ないなぁという感じで碁敵が、庭の空を見上げるようにして、光る水に近づくと顔を上げたままそのまま手の中に水をすくうように捕まえるのでした。
「凄い、上見ながら捕まえた」と三人の女の子が歓声を上げたのです。
「静かにしてみずが驚くから」
「これみずというの」
「キラキラ光っているだけで、見えない」
「こうしたら見えるからね」と言って黒い布でキラキラ光るものを包んだのです。
黒い布の中に大きな目をくりくりしているハリネズミのような動物がいました。
ハリネズミよりも針が長くて先端に丸い玉が付いているのです。
この丸い玉が回りの光を反射させて、自分の姿を隠しているのです。
「可愛い」と三人の子が目をキラキラさせて見つめました。



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