幼い頃、おばぁちゃんに連れられてまじないの処に行ったことがあります。
手形を紙の上に書き写して、身体の悪いところを直すというのです。
そのころ、私は腕に皮膚病ができて皮膚科の薬では治らなかったのです。
まじないの処は、お寺でも神社でもない普通の家具屋さんなのです。
戸を開けて、おばあちゃんが挨拶していると、うちのおばぁちゃんと同じくらいの年のばあちゃんが出て来るのです。私の側に来て、半紙に手を置い . . . 本文を読む
近所の家のオバァチャンが、夜、笑い声が聞こえて眠れないというのです。
「どこから聞こえるの」と聞くと「遠くから近づいてくるような気がするの」と言うのです。
でも、その家の他の人にはそんな笑い声なんか聞こえないそうです。
そんなある日、オバァチャンが「死ぬっておかしいことなんだね」と言い出したそうです。
「どういうこと」と聞き直すとオバァチャンにはあの笑い声の主が、遂に近くまで来たというのです。夜中 . . . 本文を読む
花子ちゃんは昼間、お友達の静恵さんとつまらないことでケンカしてしまいました。
謝ろうと思うのですけど、恥ずかしいというか自分から謝るのが口惜しくて、謝ることができませんでした。でも、やっぱりあんな事でケンカしてしまって反省もしています。
なにより、あんなつまらないことで絶交と言った自分を反省しています。
言ってはいけない言葉だったのです。
布団の中に入っても、静恵さんのことが気になって眠れませんで . . . 本文を読む
赤い玉は
2014-05-10 | 創作
大学の女友達から聞いた話です。
小学生の頃、友達が一人もできなくて寂しい思いをしたそうです。
ある日、学校の帰り道でオバァチャンが道に迷っていたのだそうです。
オバァチャンの行きたいところが近所だったので一緒に行ったそうです。
始めて逢う人だったのになぜか懐かしく感じたそうです。
オバァチャンの目的地まで案内すると、オバァチャンは一粒の種をくれたそうです。
「これは、愛の種なの。大事に両手で包んで . . . 本文を読む
フリーマーケットに出かけて凄く可愛い金魚模様のワンピースを見つけました。
水色に赤い金魚が何匹も泳いでいる模様です。
風が吹くとユラユラ揺れて、まるで金魚が泳いでいるように見えるのです。
気に入って買うことに決めました。フリーマーケットだから試着もできなかったのですけどサイズは調節できると言われました。
「サイズ調整は、大きくするときはこの水草のワッペンをスカートに貼って見てください」
「ワッペン . . . 本文を読む
雨上がりに近所の公園を通ったら、女の子が三人、ワイワイ騒いでいました。
何をしているのだろうと近づいてみると、ヤツデの葉の上にナメクジが列を作っていたのです。そんなに大きな奴でなく、本当にナメクジの子供のようなのが、何匹も列を作っていました。
ナメクジは女の子には嫌われる虫なのに、どうしてこの女の子達は毛嫌いしないのだろうと思いました。
「ナメクジ、気持ち悪くないかい」と声をかけてみました。
三人 . . . 本文を読む
五月の連休、家族の人は遊園地に行きました。
金魚は一人というか、一匹お留守番です。ポカポカと陽差しが当たって金魚鉢の水温も高くなってきました。あまり水温が上がるのは困るのだけど、冬の冷たい水温に比べると気持ちが良いです。
プクプクと水草電話が鳴りました。お隣の和金チャンから電話のようです。
「もしもし、夕焼けさん、お元気ですか」
「はい、何とか生きてますよ。和金ちゃんは元気ですね」
「ありがとうご . . . 本文を読む
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
遅い一人だけの夕食を取っているときだった。
玄関に出ると、白い猫が立っていて干物を持っていた。
「これ凄く美味しいですよ、おかずにどうですか」と言われた。
そういえばおかずに干物が食べたいなぁって、思っていたところだった。
「いくらだい」
「牛乳をお皿に一杯」と言うので白猫の待っていた皿に牛乳を入れて、干物を貰った。
焼いて食べると染み込んでいた塩味が絶妙です . . . 本文を読む
久しぶりに幼い頃に住んでいた山の村に行ってみました。
山を離れて随分時間が経っていますから、変わっているだろうなと思って行ったのですけど意外と変わっていませんでした。
と言っても変わっていないのは山や川、木々の緑です。
お隣に住んでいたじいちゃん、ばぁちゃんの家はもう誰も住んでいなくて、空き家になっていました。今では珍しい茅葺き屋根の家でしたけど、誰も手入れしないので屋根には草が所々に茂っていまし . . . 本文を読む
残業、残業で毎日、終バスで帰っていた頃です。
毎日、終バスで終点まで乗っていたので、運転手さんと挨拶する仲になっていました。
「今日も残業ですか」
「はい、今日も残業で本当はもっとしないといけないのですけど、終バスの時間ですから止めて、帰っているのですよ」
「それは、大変ですね」
「運転手さん、できればもう30分程遅くならないかしら」
「バスは定刻どおり走らないと」
「そうですよね、でも終バスには . . . 本文を読む