夕焼け金魚 

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携帯砂時計

2023-08-06 | 創作
近所にちょっと変わった時計を売っているところがあります。
以前はカラクリ時計が主だったのですけど、最近は砂時計が主な商品だというのです。
今時は携帯電話にも時計機能があるので、時計を買わなくなりますけど、やっぱり腕時計を見る癖が付いている世代なので、腕時計が壊れると困ります。
「どのような時計をお求めですか」と言われても困るのです。
「安くて正確ならそれでいいよ」
「デジタルの物でしたら安いですけど」
「デジタルの物買うのならこちらに来ないよ」
「機械式のものだとお高くなりますよ」
「高い物を安くしてなんて言いませんから、何か無いかな」
「じゃ、これなんか面白いですよ」と言って見せられたのが、砂時計。
「携帯用に腕バンドが付いていて、しかも必要の無いときは格納できますから」と言うのです。
「時刻が知りたいのだから、砂時計は」
「この砂時計は時刻が分かりますよ。ただ、ちょっと考えないといけないのですが」
「どういうこと」
「ここを引っ張ると砂時計が出てくるのですが、材質は新素材のまぁプラスチックだと思って頂ければ。伸縮性のある物なのですよ」
「凄いね、今時は伸縮性のプラスチックもあるのだ」
「砂も実は流動性の液体なんですけどね、砂にしか見えないでしょう」
「本当に液体なの」と言って見入ってしまいました。
本当に細かい粒、言うなれば粉なのです。
「なので、傾斜があれば一定のスピードで流れているのですよね。しかも途中に大きな赤い粒があるので時刻が分かるという仕組みです。引っ張って砂時計の上にガラスに赤い粒がいくつあるかで何時と言うことが分かります。次に黄色の粒で何十分かと言うことが分かって、青い粒が分ですから、ちょっと数えないといけないのが、難点ですけどね」
「へぇ、時刻が分かる砂時計なんて、ちょっと珍しいね」
「これは携帯用ではないけど、音が鳴る砂時計もありますよ」
「音が鳴るの」
「ええ、ビーズ玉が入れてあって、ガラスに落ちるときに音が鳴るのですよ」
「へぇ」感心することばかりです。
「これなんか、普通の砂じゃなくて、鳴き砂が入ってますから乙女の泣き声なんですよ」
「乙女じゃないとダメなの」
「まぁ、熟女でも良いけどやはり乙女と言った方が売れるのでね」
「でも、泣き声聞くのは嫌だな」
「そういうお客様には、笑い砂というのも」
「笑うの」
「ええ、子供の笑い声が聞けますから、元気になりますよ」
「そうか、色々あって迷っちゃうな」
「これなんか、お金の音が聞こえますから」というので聞いてみると、チャリンチャリンと硬貨が落ちるような音がしています。
「金魚さんも私も、もう高齢者ですから、時は金なりです。お金の音で貴重な時間を惜しみましょう」
「ああ、時は金なりはいいですよ。我が家には尾金の鳴る木がありますから、毎月ゴーンって鐘が鳴ってますから」と言ったら、時計屋のオヤジさん、意味が分からなくて時間が止まってしまいました。
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