翌日もその古道具屋に行くと、店は閉まっていた。
仕方なく裏通りと思う処を捜してみたが、昨日の小料理屋が見つからない。
休みでも店の所在ぐらいは確認できるはずなのに。
ガラス戸に食堂と大きく書いてある店ぐらいしかない。
お腹もすいてきたので、この店に入る事にした。日替わり定食とビールを頼んだ。
昨日の女将のような艶っぽい仕草は無理な女がビールを運んできた。
「ねぇ、この辺りに小料理屋なんか無かったか . . . 本文を読む
この街には大通りから一歩裏通りにはいると異なる町並みがある。
懐かしいような、または見たこともない奇妙な感覚の街に出会うことがある。
そう、あのときの私のように貴方も不思議な街に行くことがあるかもしれません。
あの日は夕方から突然の雨が、残業帰りの私を襲っていた。戻り梅雨のようなシトシト雨が降り続き、傘のない私は商店街で立ち往生してしまった。
さて、傘なしでこの雨の中を家に帰ろうか、それ . . . 本文を読む
雲水修行
2013-07-29 | 創作
友人の会社では、毎年夏になると入社3年目の社員を参禅と雲水修行をさせられます。
その時によって、福井であったり京都であったりするのです。
友人が参加したときは、京都でした。京都郊外の山にあるお寺に連れて行かれ、参禅の心構えからかたちを教えられ、一週間の雲水修行をさせられるのです。
この修行の評価が今後の出世に関係するとなるとおろそかにできません。
それでも、朝の3時に起こされての座禅や境内の掃除な . . . 本文を読む
金沢案内
2013-07-28 | 日記
金魚の処に友人が遊びに来るようになりました。
「新幹線が通るときっと人が一杯来て風情が壊れるから、今のうちに来ました」というのですが、そう言う見方もあるのかなと思いました。
定番の兼六園から金沢城を見て歩きました。河北門ができてからは金魚も初めてです。
河北門、金沢城の正門だと言われているのですが、石川門に比べるとどこか格調というか美的に思えないのです。石川門の方が好きですね。
現在、玉泉丸跡地を . . . 本文を読む
星新一文学賞が日経新聞社の主催で制定され、公募が始まっています。
ショートショートと言う分野を開発した第一人者ですよね。
今の携帯小説の先駆者かも。秀逸で軽い読み物として定着しました。
金魚が星新一さんの本でこれとお薦めする本は「進化した猿たち」です。
外国の1コマ漫画を解説した本ですが、秀逸です。
例えば、アダムとイブの項目では。
アダムが「君のようなすてきな女性に、はじめてあった」 . . . 本文を読む
ブランコ
2013-07-26 | 創作
この街には大通りから一歩裏通りにはいると異なる町並みがある。
懐かしいような、または見たこともない奇妙な感覚の街に行くことがある。
そう、あのときの私のように貴方も不思議な街に行くことがあるかも。
ビル街の大通りから脇の細い小路を見たとき、まん丸なお月様が見えた。
街灯の少ないせいか月が大きく、綺麗に見えたので、つい脇道に入ってみた。
小路は狭く街灯もなく暗かったが、月の明かり . . . 本文を読む
私の友人に京子という人がいます。ショートカットでバレーボール部に入っている快活な子でした。ところが、何ヶ月前から急にふさぎ気味になっていつも下向いて歩いているような憂鬱な顔をしていました。
「京子、どうしたの、この頃元気ないわよ」
「ええ、実は私ストーカーされてるみたいなの」
「ストーカー」
「ええ、いつも誰かに見られているような気がするの」
「それで何か変なものを送りつけてくるとか、なにかあっ . . . 本文を読む
昨日、モンスターズ・ユニバーシティーを見てきました。
3Dを見ようとしたら、時間を間違えて1時間も待ってしまいました。
2Dでも良かったのですけどやっぱり3Dだと子供が喜びますから。
割引使っても眼鏡代含めて一人1400円×2プラスの1300円で4100円でした。
大学だと言うから、授業風景が主だと思っていたら、コンクール大会の話でした。
最後は優勝するというハッピーエンドと思っていたら実はの逆転 . . . 本文を読む
私が暮らしていた家は、商店街の中程にありました。通りは車や人通りが多くてとても遊び場にはなりません。裏口は棟割り長屋とブロック塀に囲まれた細い小路でしたから、近所の子供達とそこが遊び場になりました。
遊び場にしていた小路を抜けると、静かな屋敷町に出ます。板塀やブロック塀に囲まれた家が並んでいました。塀越しに城壁に鉄の窓枠の付いた土塀や松の樹や銀杏の樹が見えました。
街中にもかかわらず、鬱蒼と繁 . . . 本文を読む
七日の夜、家康は茶臼山に本陣を移して各大名家に礼を述べた。
前田利常と由比勘兵衛も共に家康の前に来るよう呼び出されていた。
前田利常の処に来た勘兵衛は利常の姿にびっくりした。
利常が烏帽子・直垂姿の正装だったのだ。
「何という格好でござるか、前田家は武門の家柄、戦場では甲冑姿が当然でござろう」
勘兵衛の剣幕に利常の近習が慌てて、甲冑を着せているとき勘兵衛が声を掛けた。
「殿、顔に疲れ出ているよう . . . 本文を読む