あさやん通信

おいらの日記、徒然なるままに!

氷川清話①

2010-06-06 01:08:06 | いい話


勝海舟晩年の談話をまとめたものが「氷川清話」です。
海舟翁の氷川の寓居には、東京朝日の池辺三山、国民新聞の人見一太郎、東京毎日の島田三郎らがたびたび訪れて、海舟翁の話を書き留めたのですが、江戸弁の調子もよく、海舟翁の言葉で政治や人物が語られていて、読んでいてその場にいるような臨場感を感じます。

そして、なんていっても含蓄のある言葉に圧倒されます。一言一言に重みがあって、その言葉にのめりこんでいってしまいます。

その中から、海舟翁の人物鑑定を少し取り上げて見ます。

◇おれは、今までに天下で恐ろしいものを二人みた。それは横井小楠と西郷南洲だ。横井の思想を、西郷の手で行なわれたら、もはやそれまでだと心配していたのに、はたして西郷は出て来たわい。

◇坂本龍馬が、かつておれに、「先生はしばしば西郷の人物を賞せられるから、拙者もいって会ってくるにより添え書きをくれ」といったから、さっそく書いてやったが、その後、坂本が薩摩から帰ってきていうには、「なるほど西郷というやつは、わからぬやつだ。少しくたたけば少しく響き、大きくたたけば大きく響く。もしばかなら大きなばかで、利口なら大きな利口だろう」といったが、坂本もなかなか鑑識のあるやつだよ。

◇藤田東湖は、おれはだいきらいだ。あれは学問もあるし、議論も強く、また剣術も達者で、ひとかど役にたちそうな男だったが、ほんとうに国を思うという赤心(まごころ)がない。もしも東湖に赤心があったら、あのころの水戸は、天下のご三家だ。直接に幕府へ意見を申しいずればよいはずではないか。それになんぞや、かれ東湖は、書生を多勢集めて騒ぎまわるとは、実にけしからぬ男だ。おれはあんな流儀は大嫌いだ。おれなどは、一つの方法でいけないと思ったら、さらに他の方法を求めるというふうに、議論よりはとにかく実行でもって国家に尽くすのだ。

◇紅葉というのは才子だ。小説のほかにも仕事のできるやつだ。書いたものに、才気が現われている。(尾崎紅葉)

◇小説も退屈なときには、読んでみるが、露伴という男は、四十歳ぐらいか。あいつなかなか学問もあって、今の小説家には珍しく物識りで、少しは深そうだ。聞けば、郡司大尉の兄だというが、兄弟ながらおもしろい男だ。(幸田露伴)