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「黄金の羅針盤 ライラの冒険シリーズⅠ」 フィリップ・プルマン

2009年02月10日 | 読書
「黄金の羅針盤 ライラの冒険シリーズⅠ」 フィリップ・プルマン  新潮社
  The Golden Compass     大久保寛・訳

『黄金の羅針盤』は、全3巻から成る物語の最初の部分をなしている。
この第1巻の舞台は、われわれの世界と似た世界であるが、多くの点で異なる。
第2巻の舞台は、われわれが知っている世界である。
第3巻は、各世界間を移動する。

その第1巻。
イギリス、オックスフォードにあるジョーダン学寮。
この世界では、人間とダイモン(守護精霊)は片時も離れずにいる。
人間が子どもの時は自由に姿を代えるダイモンだが、大人になると一定の姿を保つようになる。
早くに両親を亡くした11歳のライラは、学者の叔父アスリエル卿の計らいで、ジョーダン学寮で暮していた。
ライラのダイモンの名はパンタライモン。 
ライラは学寮を探検して遊ぶのが好きだった。
ある日一人で学寮長室に忍び込み、アスリエル卿が「ダスト」に関する研究をしていることなどを知る。
そしてアスリエル卿はその研究のために北極地方に旅立って行った。
最近、各地で子どもが姿を消す事件が続いていた。
正体が分からないこの誘拐犯に対し、ゴブラー(むさぼりくう者)という名前が付いて、人々を怖がらせていた。
そして、ライラの遊び友達、調理人の子どもロジャーも姿を消す。
同じ頃ライラは、献身評議会のコールター夫人に引き取られることになる。
その時、ライラは学寮長から、真実が分かるという黄金の「羅針盤」に形が似た「真理計」を受け取る。
コールター夫人と過ごし王立北極協会の人と出会う中、献身評議会こそゴブラーで子どもを誘拐しては北極地方に送っていることをライラは知る。そしてダストも係わりがあると。
ライラはコールター夫人から逃げ出し、子どもがたくさん誘拐されていた船上生活者ジプシャンと共に北極地方へ向う。



映画を先に見たので、読みながら映画の場面も浮かぶ。
結構、物語の流れが違う。
やはり本の方が登場人物の背景や係わっていく過程がスムーズなので、物語にも入りやすい。
そしてまず違うと思ったのが、ライラ。
本ではもっと泥臭くがさつな、あまり上品さは感じられない少年のような子。

物語は全体を通しては、3部作の始めということもあってか、舞台紹介的な感じがする。
それなりに山場もあるのだが、最後の方にダストに関する見解が披露され、それがこの物語がどう展開されていくのかを示している。
宗教的な要素が強く係わって来るようだ。原罪とか。
何故人間は邪悪な者になってしまったのか。人間が邪悪にならない道はあるのか。

しかしそれまでの物語も、登場人物の個性が強く印象に残る。
1番はクマ族のパンサービョルネ。
白くまのイオレク・バーニソンとイオファー・ラクニソンの戦いも生々しかった。
イオレクが勝ったのも、ちゃんと作戦勝ちだったことが分かった。

知恵と行動力で問題を解決していくライラもとても魅力的だ。
陰謀渦巻く社会で、誰を信じていいのか迷うところだが、結構直感で人を信じていくライラ。
大丈夫なの、とちょっと心配にもあるのだが。それが子どもの豪胆なところかも知れない。
直感って割と一番正しいのかも知れないが。
そう、叔父を毒殺しようとした学長をあまり怖がることもないのが不思議な気がしたが。
アスリエル卿と学寮長はライラの中では同等の立場だったのかも知れない。
どちらにもあまり信頼を置いていなかったというか、すでに自分をしっかり持っている。

1巻は冒険の要素が強い。
雪に覆われた世界での冒険物語。
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