しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「すべての見えない光」  アンソニー・ドーア 

2017年04月14日 | 読書
「すべての見えない光」  アンソニー・ドーア   新潮社    
 All the Light We Cannot See         藤井光・訳

1934年。
フランス、パリ。
6歳のマリー=ロール・ルブランは先天性の白内障視力を失う。
国立自然史博物館の錠前主任として働く父親と2人暮らし。
父親はマリー=ロールの為に木製のミニチュアの街を作り、覚えて一人でも動けるようにしていく。
誕生日には木製の立体パズルを作り中にプレゼントを入れて贈り、マリー=ロールはそれを素早く解いていた。

ドイツ、エッセン地方のはずれにある炭鉱製鉄地帯のツォルフェアアイン。
7歳のヴェルナー・ペニヒは3歳年下の妹のユッタと2人、孤児院で暮らしていた。
父親は炭鉱で事故死していた。
ヴェルナーは物を作るのが好きで、ユッタは絵を描くのが好きだった。
ヴェルナーはゴミ捨て場から見つけた壊れたラジオを直し、ユッタと聞いていた。
その中には遠くフランスから聞こえて来るものもあった。

やがてマリー=ロールはある任務を帯びた父親と一緒にパリを離れ、サン・マロの伯父の家へ。
そこには前の戦争で傷ついた伯父のエティエンヌがいた。
かつてエティエンヌは戦死した兄と一緒に作った子ども向け科学の話を録音して放送していた。
父親はサン・マロのミニチュアも作る。
ヴェルナーは技術の才能で、国家政治教育学校に入学する。
そしてその高い技術の為、15歳で無線担当の技術兵として戦地へ送られる。

1944年8月。
サン・マロはドイツとアメリカの攻防戦の最中にあった。
そんな中、2人は出会う。








1934年から1944年までのマリー=ロールとヴェルナーの2人と物語と、その後の話。
短い章で、2人と時代を行ったり来たりするが、それが物語性を高めている。
どちらも先が気になり、わりと長い話だが一気読み。

戦争中の話で、苦しく良い事もない時代。
そんな物語なのに、なぜか優しい気持ちになる。
知らないうちに涙がこみあげて来る場面も多く、深い所で心が揺さぶられる感覚。
タイトルに光があるからでもないが、優しい淡い光が溢れている。

それでも、しっかりと戦争は嫌だと強く思える。
日常の生活から少しずつ奪われて行くもの。
戦争とは否応なく巻き込まれる物なのだ。
それはどうしようもない事なのか。
そんな中でも、なにが正しいか自分の判断を優先する人たちもいる。
マネック夫人やフレデリック。
ユッタの感情も、子どもだからこそなのか正直だ。
主人公の2人を取り巻く人たちも丁寧に書かれてドラマがある。
戦争後、それぞれがどう生きて来たかもきちんと書かれていて安心する。
そこに、ヴェルナーもいて欲しかった。
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