しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「遙か南へ」 ロバート・R・マキャモン

2009年09月26日 | 読書
「遙か南へ」 ロバート・R・マキャモン     文春文庫
 Gone South     二宮磬・訳

1991年8月、ルイジアナ州シュリーヴポート。
42歳のダン・ランバートは不況の中仕事を失い、ローンの担保にトラックを回収されそうになる。
トラックは仕事をするのに必要なため、そのことを銀行に話に行く。
融資担当のブランチャードとの会話は、ダンがベトナム従軍した事に話が及び、それがダンを不快にさせる。
そして、ダンはその心の揺れが影響して、怒りを抑えられなくなる。
その結果、ブランチャードを銃で撃ち殺してしまい、逃走する。
病で余命いくばくもないダンは、別れた妻と息子に会いに向かう。



面白かった。
そして色々考えさせられた。
ダンの気持ちが手に取るように分かり、感情移入出来る。
逃避行と言うより、その時の出来事が方向を決めて行く。
最後はそれが、“大きな流れが導いて行った”という、ドラマチックな幕切れになる。
その出来事が、とても自然な感じで続いて行くので、すんなり受け入れられる。
心身ともに個性的な登場人物が3人登場する。
その3人も、それぞれの人物が丁寧に書かれているので、生き生きと動いている。

辛い気持ちになる物語で、ラストは悲惨な状況しか思い浮かばず、もっと辛くなるかと思っていた。
しかし、ラストは良かったと思えるものだった。
悲惨な状況から、優しいラストになり、読後感もほっと出来た。

しかし、戦争が残した心の傷に国家や社会は対応していないことは色々なことで知れるが、何度触れても心が痛む。
これは物語だけのことではないから。
だから、ただ良かったとだけは言っていられないのだけれど。

“南に行く”と言うのは、ベトナムの時、“正気を失う”と言う意味だそうだ。

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