しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「吸血鬼カーミラ」 レ・ファニュ 

2006年03月01日 | 読書
ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュの7編の怪奇短編集。
1839年から1872年に書かれた作品。物語の時代もその頃になる。
白い手だけが夜な夜な窓に現れ音を立てるたり、扉をノックする館。「白い手の怪」
泥棒をして死んだ男の死体に話しかけ、夜中に盗みだした、悪魔の様な薄気味の悪い男。「墓堀クルックの死」
呼吸をしてない男が、ある画家の美しい姪を妻に迎えたいとやってくる。「シャンケル画伯」
復讐者が目に見えない物になってまとわり付く。「仇魔」
父親の遺産を相続するが、父親と兄の亡霊に悩まされる。「大地主トビーの遺言」
悪徳判事が悪行の末、悪夢に悩まされ首を吊って死ぬ。その何日か前から、黒いマントの男が判事の周りをうろついていたが、正体は分からない。「判事ハーボットル氏」

そして表題作「吸血鬼カーミラ」
スチリア(第一次欧州戦争以前にあった、オーストリアの州の名)の城に父親と、乳母のペロドン、家庭教師のラフォンテンと暮らすローラ。
ローラは6歳の時、夜中に目を覚ますと見知らぬ若い女の人がベッドに入って来た。そのまま眠ってしまったら、次に胸を針で刺された様な痛みを感じて起きる。と女の人が自分を見つめたまま消えた。恐ろしい思いが残る。
そして19歳。
20マイルほど離れた隣人のスピエルドルフ将軍は姪のラインフェルトを連れて訪ねてくる筈が、そのラインフェルトが突然に死んで来られなくなる。
悲しんでいると、城の前で馬車が転倒する事故が起こる。
馬車の母親は、急ぎの旅で、娘のカーミラを3ヶ月後には迎えに来ると言って、行ってしまう。
カーミラはとても美しい娘だったが、6歳の時に見た女の人、そのままだった。
カーミラもローラを6歳の時に見たと言い、二人は友達になる。
しかし、カーミラが自分の事はなにひとつ話そうとしなかった。
そして、恋人の様にキスをしたり抱き締めて来るのに戸惑っていた。
カーミラは葬式の賛美歌を嫌がる。その頃村では、若い娘が幽霊を見て死んでしまう、奇妙な病気が流行りだしていた。
表具屋が古い絵を持ってくる。その中の1枚がカーミラにそっくりだった。
ローラが悪夢を見て、胸に痛みを感じ始める。
スピエルドルフ将軍がやって来て、ラインフェルトの死んだ経緯を話す。
それは、客人としてミラーカを迎えた時に始まった。ミラーカは吸血鬼だった。
そこにカーミラが現れ、カーミラとミラーカが同一人物と分かる。
そして、あの肖像画の人、カルンスタイン伯爵夫人その人。
スピエルドルフ将軍はカルンスタイン伯爵夫人の墓を暴き、胸に杭を打ち込み、首を刎ねて滅ぼす。

カーミラはかなり、妖艶にローラに迫っている。結構濃厚。
カーミラはおしゃべりで陽気な所と冷たく突き放す所が同居し、短時間にそれが現れる。
そんな情緒不安定なところに振り回されているローラだが、ローラも結構しっかりしているので、カーミラの思い通りには行かない。
そんな二人の関係が美しい風景の中で幻想的に書かれている。
怖いというより、妖しく美しい。そんな印象の女の吸血鬼の話。


人は死を恐れるが、それよりももっと恐れるのは、安らかに死を迎えられない事。
だから死者が蘇ったり、亡霊になるのが怖い。
死んだら天国に行くと行くのが普通だから。
だから、怪奇小説は天国に行けない魂が主役になっている。
あまり、全体的に怖くないのは、天国の事などあまり考えた事がないからだろう。
その当時の信心深い人々には、怖さが違うのかも知れない。
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