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「〈完本〉初ものがたり」 宮部みゆき

2021年09月25日 | 読書
「〈完本〉初ものがたり」 宮部みゆき   PHP文芸文庫   

9篇からなる短編集。

文庫本未収録の三篇を加え、茂七親分の物語が再び動き始めた!
茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。
謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。
鰹、白魚、柿、菜の花など、季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。
ミヤベ・ワールド全開の人情捕物ばなし。
         <文庫本裏カバーより>

「お勢殺し」
俸手振りをしていたお勢の死体が大川で見つかる。
自殺かと思われたが、裸だった事が茂七にっは引っ掛かる。

「白魚の目」
稲荷神社に住まうホームレスの子どもたちが毒の稲荷寿司を食べて死んでしまう。

「鰹千両」
棒振りの鰹を千両で買うと言う大店。
隠された理由は。

「太郎柿次郎柿」
百姓を継いだ長男が、家を出て、丁稚から出世した弟を殺す。

「凍る月」
商家の台所から新巻鮭が盗まれる。
誰もが猫の仕業と問題視しなかったのに、番頭から婿入りした主人だけは犯人探しをしようとする。

「遺恨の桜」
行方不明になった婚約者を探す夏が日道(超能力をもつ拝み屋の少年)に頼んだら、桜の下に埋まっていると言う。
しかし、婚約者は囚われていて無事だった。

「糸吉の恋」
火事で焼けた長屋の後が菜の花畑になる。
そこで、若い娘を見かけた糸吉は恋に落ちる。
娘がここに赤ん坊の死体が埋まっていると言い、それを糸吉は信じ、茂七に言うが相手にされず。

「寿の毒」
隠居の祝いで、その息子の元嫁、おきちが死ぬ。
食あたりかと思われ、料理を担当した店の窮地を救う為真相を調べる。

「鬼は外」
松井屋が繁盛して、兄と妹は違う商いで店を2つ持つ。
しかし、兄が死んだので、昔双子だった為に家を出された寿八郎を探して呼び戻す。
しかし少しして、寿八郎は偽物だと妹は言い出す。







最後の3篇が今までの文庫本未収録。
『きたきた捕物帖』を読んで、『初ものがたり』とのつながりが書かれていた。
未収録は初めてだが、他のは前に読んでいるはずなのに、覚えていない。忘れている。
なので、今回も全く新しい気持ちで楽しめた。
ただ犯人のからくりが、読んでいてピンと来たりしたのは、どこかで覚えていたからだろう。
稲荷寿司屋のことも、こんなに登場して印象深いのに覚えていなかった。
結構推理を働かせる物語が多いので、その面でも面白い。
悪い事をした者を捕まえて終わりではない物語。
そこには社会の駆け引きや、人情がある。
そんな茂七の葛藤や判断も読みごたえがある。
糸吉の存在は、『きたきた』の2人を合わせたようだ。
この物語で謎のまま終わった、稲荷寿司屋さんが『きたきた』で分かるのだ。

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