しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「血の雫」  相場英雄  

2019年03月08日 | 読書
「血の雫」  相場英雄   新潮社   

田伏恵介刑事は1年半前にあった誘拐事件での失策から、心を病む。
その復帰後の最初の事件が中野区の裏路地で女性が刺殺されたものだった。
手掛かりが掴めないまま、杉並区でタクシーの運転手が刺殺され、同一の凶器が使われたと判明する。
そんな時、田伏は一課に異動になったばかりの長峰勝利巡査長と組まされる。
長峰はIT企業でエンジニアを務めていた経歴を持つ。
1年間サイバー犯罪対策課にいたが、周りと馴染めずにいたようで、環境を変えるという事だった。
会議の記録も素早くスマホに打ち込む長峰に、田伏は戸惑う。
田伏の失策は、ネット社会に疎い事が原因だった。
そんな2人は、お互いをカバーしながら事件に取り組んで行く。
2人の殺害は同一犯との結論が出た頃、新聞社に『ひまわり』と名乗る犯人からの声明文が送られる。
そこには、次の犯行が仄めかされていた。







コンピューターに詳しい刑事と、その反対に身体を使って動きまわる昔タイプの刑事のコンビ。
2人の性格と捜査の方法の違い。
そんな様子が興味深く、面白く書かれている。
田伏は昔のタイプと言っても、頭ごなしに押さえつける事はない。
色々考えて言葉を発する。
それに長峰も受け入れる気持ちを持ち、少しずつ刑事らしくなって行く。
そんなままで、物語は進んで行くのかと思ったら、事件は思わぬ方向へ。
犯行声明を出した犯人のハンドルネームが『ひまわり』とは随分可愛い名前だと思った。
そこに大きな意味があった。
『ひまわり』が何を求めていたのか。
段々分かって来る。
ネット社会の弊害を訴える意味もある物語だと思うが。
最後の頁を見て分かる。
これは、忘れてはいけないと言う事だと。
ネット社会は、わっと盛り上がっても次々と話題を持ち出し、あっという間に忘れられる。
そこにある事がすべてではないが、忘れてはいけない事があるのだ、と。

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