しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「絢爛とか爛漫とか」

2007年07月08日 | 観劇
2007.5.8(火)~5.23(水)  赤坂 RED/THEATER
飯島早苗・作  御笠ノ忠次

大正初期、4人の若き文士の物語。
舞台は古賀大介の部屋。
そこに他の3人が集まる、春夏秋冬。


ダンスホールに行く為に社交ダンスの練習をする4人。
しかし、古賀は小説を書かなければならないので、行きたくないという。
古賀はずっと書けなくて悩んでいた。
しかし、ダンスホールに行くのは、加藤がダンスホールの踊り子ビビアンに恋をしたので、加藤とビビアンを会わせる為で、そのビビアンが古賀の小説のファンだというので、古賀を連れていく必要があったのだ。
それを聞いて行く気になった古賀だった。
その間に、こんな話しが入る。
諸岡は終わりのない小説を書いたという。
加藤は恋と称して、手助けしてもその先は進まずその女性をモデルに小説を書く。
加藤の小説は美女をモデルにした怪奇な耽美小説らしい。


相変わらず小説が書けずにいる古賀は冷たい物を食べ過ぎて、お腹を壊して臥せっていた。
そこに、泉の別荘に遊びに行くと、3人が誘いに来る。
終わりのない諸岡の小説は評判になり、加藤はビビアンで1つ小説を書き、
評論の加藤のモダン小説と称して1本書いていた。
焦る古賀は諸岡の才能に嫉妬しているが、諸岡は、小説は誰か才能のある人が一人いると、みんなを引っ張っていくからいいという。
その諸岡は古賀が才能ある作家だと言う。


小説を書き上げた古賀をお祝いする為の集まった4人。
その席で、加藤はマザーコンプレックスの自分を嘆く。
そして諸岡は、妾腹の自分だったが、実子が結核になり後継ぎの話しが廻って来たので、書くのを止めて、父親の事業を継ぐという。
古賀は才能ある奴が止めるのは冒涜だと怒り、自分の小説はただ書き上げただけの物だと、原稿用紙を投げ捨てる。
諸岡は本当に文学が分かって才能あるのは古賀だと言う。
そして、加藤の母が倒れたと電報が届く。
古賀は睡眠薬中毒になっていた。


諸岡は事業の勉強の為に海外留学することになり、船で旅立って行った。
加藤は母親の死後、実家にいて父親とわかり合えそうだという。
古賀と泉は火鉢を囲んで向き合い、古賀が考えた小説のストーリーを話す。
それは、醜い娘が綺麗なものを追い求め、極楽に行くが極楽の美しさに触れた後は地獄に興味を持つというもの。


まったく性格の違う4人の文士の友情物語。
大正初期という、そんなのどかな自由な雰囲気が感じられる、会話劇。
理想や夢、未来を熱く語っても少しも恥ずかしくない時代。
小説について、自分の才能について、求めているものについて、悩みについて、結婚について、熱く取りとめもなく話していく。
そんな話しを聞いているのが心地よい。
どうして、今はそんな話しは恥ずかしいと思ってしまうのだろう。
知らないだけで、若者はそんな話しはしているのだろうか。

静かな会話劇だが、秋のシーンで、「無人島に2人でたどり着いたら、男でもいい」みたいな話しになり、4人で追いかけっこが始まる。
このシーンだけは、なんだか素になって楽しんでいるようだった。
下は畳なので、足袋や靴下では滑るので、脱いで走り回っていた。

中庭に本物の鶏がいて、おとなしくしている。


古賀大介  土屋裕一
一番うだうだと考えてしまい、悩む。
しかし、それを隠しても置けなくて友達にぶつけて、拗ねたり捨て鉢なことを言ってしまう。
それをフォローしてもらうことも期待しているような、お坊ちゃまなんだろう。
長い台詞を淡々と語る土屋さんは、拗ねた感じも可愛かった。
冬の小説のストーリーを語るシーンは、聞いているだけでも引きこまれた。

泉謙一郎  日比大介
富豪の息子らしい。堂々としいる。
自分の悩みも色々あるだろうに、人には話さず、一人で解決してしまうタイプ。
一見気障っぽいので、敬遠してしまいそうだが、人一倍友達を気遣い、心配しているのが言葉や態度からわかる。
最後に他の男の子を妊娠したガールフレンドの令嬢と結婚を決めたという、男気のある人。

諸岡一馬  加藤啓
豪快な気持ちと外見で、思っていることはぽんぽん言って裏表のないタイプ。
面倒見も良く、洒落も聞いて、楽しい人だが、生い立ちからして一番人生を考えていたのかも知れない。
とっても、「諸岡!」という感じで、本来の加藤さんは、どんな人なんだろうと思った。
着物に袴だったので、洋服姿もちょっと想像出来ない。

加藤常吉  及川健 
4人の中では末っ子的な存在で、みんなに守られている。
自分の悩みも隠すことなく打ち明けて、人の前でも泣ける、感情に素直な性格。
それとは裏腹に書くものは、美女を縛り上げたり殺したり。
丸眼鏡を掛け着物姿で、及川さんにしては珍しく、可愛いとは無縁な役かと思ったら、  子どもの時は女の子として育てられたと。「私の女装は可愛いのですよ」と眼鏡を取って言う姿は、その台詞に納得出来る可愛らしさだった。
(そろそろ、及川さんの女装が観たいと、思った)
及川さんのブログで舞台裏話しも少し聞けるのだが、ビビアンはブロマイドで登場するのだが、そのビビアンは及川さん本人の写真で、日替わりだったらしい。
それを見ながら、ビビアンの美しさを語る及川さんはやっぱり、ナルシスト。

 

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